第33章 決意の裏側
「自分の価値観を押しつけるわけじゃないけど、あんた達もきっと、出会うべくして出会ったんじゃないかな。」
「出会うべくして…」
リヴァイさんとの出会いが、もし必然なのだとしたら…
エマは初めてそんな風に考えた。
奇跡と考えるよりももっと感動的で運命的だと思ったし、それに、
「すごく…すごく大切にしたいです。リヴァイさんのこと。」
自分のことを同じように好きになってくれて愛してくれて、大切にしてくれるリヴァイへの想いが溢れそうになる。
そして同時にこうも考えた。
「でも、当たり前じゃないんですよね…一緒にいられるのって。」
一緒になれたのが必然だとしても、それを継続させるかどうかはその後の二人の意思次第だ。
あなたが好き。
愛したい、愛情を注ぎ続けたい。
双方が相手をそんな風に思い続けられるからこそ、ずっとこの関係は成り立つし、それはやはり奇跡のようなものだとエマは話した。
「うん。だから努力しなくちゃいけない。努力っていっても“やらなきゃ”と思って頑張るのとは違うけどね。相手のことを想えば自然と何をしたらいいかは分かるはずさ。」
真剣な顔で頷くエマに、奥さんは優しく微笑んだ。
「でもあんた達は十分だろう。お互いちゃんと、相手のことを思いやれてる。無愛想な彼だって、しっかり愛してくれてるだろう?」
「…はい、とても…」
エマはもう恥じらわなかった。
今胸の中にあるのは、純粋にリヴァイを想う気持ちだけだ。
「ハハッ、なら安心だ。これからも何があっても、その心を絶やしちゃいけないよ?」
「はい!」
ニカッと歯を見せた奥さんに倣って、エマも歯を見せる。
その時外から、馬が鼻を鳴らす音が聞こえてきた。
「噂をすれば何とやら、だね。」
「そうですね。色々とありがとうございました。」
エマは立ちあがってぺこりと頭を下げると奥さんも立ち上がり、エマの傍へ来て何やら耳打ちをする。
「…!!!」
顔を離した奥さんはしたり顔で、顔から湯気が出そうなほど熱を帯びたまま茫然とするエマの頭を、ポンポンと撫でた。
「こちらこそありがとね。久しぶりにあんたみたいなピュアな若者と話せてあたしも楽しかったよ。」