第33章 決意の裏側
奥さんお手製の朝食を次から次へと頬張り、あっという間にエマの皿は空になってしまった。
「オイオイもう食べたのか」
「へへ、本当に美味しくてつい!それに次は何乗せようかなって考えながら食べてたらあっという間でした!」
リヴァイは満面の笑みのエマを見ていたらつい甘やかしてやりたくなり、自分の皿とパンの入った籠をズイっと差し出した。
「食うか?」
「え?!そんなそんな!それはリヴァイさんの分なので私は大丈夫です!」
「俺に遠慮するなよ。そんなに美味かったんならもっと食え」
「や!ダメですよ!リヴァイさんが食べてください!私はもう十分満足しましたから!」
両手を胸の前で振り遠慮するエマだが、リヴァイはそんなエマを見てハッと笑い声を漏らす。
「お前…それは嘘だろう。“まだ食いたい”とはっきり顔に書いてあるぞ」
「っえ?!」
その言葉にエマはギョッとして顔のあちこちを触り真剣に確認し出すと、リヴァイはたまらず吹き出してしまった。
「やだ…!私めちゃくちゃ卑しい奴じゃないですか…」
「別に卑しくていいじゃねぇか。ここへは早々来れねぇし食べておけ」
「…じ、じゃあ…いただきます」
そろそろと手を伸ばし遠慮がちに食べ始めたが、咀嚼し出すとエマはまた花のような笑顔を咲かせた。
リヴァイは嬉しそうに頬張るエマをもっと見ていたいと思っていた。
この笑顔が見れるなら自分の分なんぞいくらでもくれてやる、なんて思いながら、リヴァイは微笑ましく見守った。
食後の紅茶を飲み終えるとリヴァイは馬の準備をしに厩舎へ向かった。
この宿には牧場が併設されており、食事のミルクやチーズなどの乳製品はそこの家畜から搾乳したものを使用しているらしい。
だからリヴァイの愛馬、イーグルも牧場の厩舎の一角を借りてそこに繋いでいるのだ。
「お口にあったかい?」
エマはリヴァイを待ちながらロビーのソファで追加の紅茶を飲んでいると、調理場から出てきた奥さんに声をかけられた。
「はい、とっても!昨日の晩ご飯も、朝食も!特に今朝のパンは癖になる程美味しくて…本当に感動しました!」
「っははは!嬉しいねぇ。そう言ってもらえると早起きして焼いた甲斐があるってもんだ」