第33章 決意の裏側
「わぁ…!!」
エマは目を輝かせていた。
籘のカゴに入った焼きたてのパンの隣には、大きな丸皿に乗ったバター、チーズ、ハムや生野菜、そして色とりどりのフルーツ。
小ぶりな器に注がれたかぼちゃのポタージュも添えられている。
「リヴァイさん見て!すっごく美味しそうですよ!盛り付け方もすっごくかわいい!」
「そうだな…」
テーブルの向かいに座るリヴァイは子供のようにはしゃぐエマとは対照的に冷静だ。
二人とも同じメニューだというのに、エマは料理が運ばれて来るたび感嘆の声を上げ見てと言ってくる。
たぶんとにかく感動を伝えたくて仕方ないのだろう。リヴァイはそう思って、適当に相槌を打っていた。
「もー!リヴァイさんさっきからそうだな、ばっかりじゃないですかー!冷めてる!」
確かに彩り豊かな朝食は食欲をそそるが、自分はエマみたく感情豊かに表現するのは苦手だ。
あとエマがしきりに言っている“盛り付けがかわいい”の意味もよく分からない。
でも口を尖らせ文句したかと思えばまたうっとり食卓を眺めるエマを見て、リヴァイの口元は緩まった。
食事よりも、コロコロ表情を変える無邪気なエマを眺めていた方が楽しいし満たされる。リヴァイはそんなことを思っていた。
「ハハッ!嬉しい反応してくれるじゃない。でも眺めてるだけじゃなくてそろそろ食べてくおくれよ?せっかくのパンもスープも冷めちまう。」
ミルクを注ぎながらニッと歯を見せたのは宿の主人の奥さんであり、この朝食を作ってくれた本人だ。
「そうですよね…!あぁ、でも美味しそうすぎて食べちゃうのもったいないなぁ…」
「何わけのわからんこと言ってんだ。言われた通り冷める前に食うぞ。」
リヴァイがさっさと手を合わせると、エマも慌てて手を合わせた。
「ん………っ!美味しい!リヴァイさん!美味しいです!!」
「あぁ、悪くない」
バターにレタス、ハムとチーズを層のようにパンに重ね頬張るなり、エマは興奮気味に感想を寄越した。
確かにここのパンはしっとりふわふわで癖もなく、どの食材を盛っても合う。
兵舎の乾燥した硬いパンとはかけ離れた美味さである。
前回訓練で訪れた時も思ったが、やはりここの飯は別格だ。