第32章 北の地にて ※
ちゃんとお前みたいに笑ってやれてるだろうか。
自信はあまりないから、少し補足させてくれ。
「愛してる、エマ」
誰よりも、何よりも。
天使のように微笑むお前をいつまでも見ていたい。
傍にいたい。
この先もずっと、永遠に…
今だけはそう思ってしまっても許されるだろうか。
「私も、愛しています…リヴァイさん」
目尻で水たまりになっていた涙が一筋零れた。
大きな目をくしゃっと細くさせたエマが笑っている。
優しく弧を描く唇にそっと唇を重ねた。
少ない面積からでも確実に伝わるエマの温度に、あたたかい何かが胸いっぱいに拡がる。
これが“幸せ”、だというのだろうか…
もしそうなら、人々が幸せを手にしたいともがく理由がよく分かる。
だってこんなにも温かく安らかで、身も心もこの温もりに全て預けたままでいたいと、そう思ってしまうのだから。
背中に腕が回った。
すらりと細く弱々しいけれど、リヴァイにたくさんの幸福と安らぎをくれる腕。
そして今ここでは、それがリヴァイに対する最大限の愛情表現だ。
「…エマ、いいか?」
「…うん……」
背中の腕に力がこもる。
エマの艶やかな髪にキスを落とし、リヴァイは腰を動かし始めた。
「あぁっ…はぁっあ…あぁんっ」
律動を再開してすぐ、発した声に艷が出る。
エマがリヴァイの背中を引きつけるように腕を巻きつけ より深く繋がろうともがけば、リヴァイはそれに応えるよう強く深く腰を打ち付けた。
“愛してる”
そう言ってくれたリヴァイの優しい眼差しがエマの脳裏に浮かぶ。
今 目の前で溢れんばかりの愛を注ぎ込んでくれる彼が言った、深い慈愛に満ちた言葉。
回りくどい言い方は決してしない彼だからこそ分かる。
その一言に、どれほどの愛が詰まっているかということが。
「あっあぁっ、りばっ、りばいさぁあっ!!」
エマは幸せだった。
ずっとずっと、こうして二人でいられたらいいのにと願わずにはいられないほど。
不透明な未来のことなど忘れて、きっと永遠にこの人と一緒でいられると、そう信じてしまいたいほど。
今この時だけは、そう考えてしまってもいいだろうか?