第32章 北の地にて ※
リヴァイが緩い抜き差しを開始すると、荒い息に混ざって再び甘ったるい声が顔を覗かせる。
左右の口角が上がるのが止められない。
エマの望みなど声色ひとつで手に取るように分かる。
彼女の欲しいままにしてやりたい気もするが、それでは十分には満足できないだろう。
エマも、俺も。
「あっ…はぁ…りば、い…さん…う、あぁ」
滾った肉棒の先や側面を膣壁に擦りつけるよう腰を回すと、目の前の身体がくねり、切ない声が聞こえた。
「エマ…」
名前を囁けば、顔を横へ向け頬全体をシーツにペタリと付けていたエマが震えながらも懸命に後ろを向く。
目はこちらを向いているが、一体どこを捉えているのか分からないし、半開きになった唇の端からは涎が垂れてしまっている。
リヴァイは息を飲んだ。
なんと官能的で、そしてなんと儚く美しいのか…
リヴァイは繋がったままエマの背中を包み込むようにして身体を重ねキスをした。
可愛らしい額へ、潤んだ瞳を覆う瞼へ、赤く熟れた頬へ、そして濡れた小さな唇へ。
「リヴァイ、さん…」
名前を呼ばれ、胸が締めつけられる。
「エマ…」
名前を呼ぶだけで、燃えるような熱が体の芯から湧き上がる。
「…と、」
ふと、震える唇が僅かに動いた。
目を見て耳を澄ます。
「もっと…近くに、いきたい…」
弱々しく掠れた声が紡いだのは、切実な願い。
その表情にはもう余裕など一切残されていなかった。
唇を震わせ、あと少しで涙が零れ落ちそうだ。
その刹那、リヴァイの心臓は鷲掴みにされた一
リヴァイは身体を繋げたまま器用にエマを仰向けにする。
顔の横に両肘をつき、自身の躰で彼女をすっぽり隠すように抱き竦め見下ろした。
ふわり、と微笑むエマ。
その微笑みは羽根のように柔らかく、春の陽射しのように穏やかにリヴァイの心を包み込んだ。
言葉がなくとも分かる。
エマが全身全霊で愛してくれていることが。
気がつけばついさっきまでリヴァイの中にあった下衆な淫欲にまみれた欲望は影を潜め、純粋にエマと愛を確かめ合いたいと思うようになっていた。
リヴァイは陶器のように滑らかな頬へ静かに右手を添えた。