第6章 秘書のお仕事
リヴァイの執務室もエルヴィンの所と同じように、部屋の隅に簡易キッチンがあった。
エマはそこでお湯を沸かすと、茶葉が入った二人分のカップに熱々のお湯を注いだ。
2人はテーブルを挟むようにして向かいあわせでソファに腰を掛けた。
カップから立ち込める湯気の向こう側にリヴァイの姿が見える。
「これ…美味しい!」
「それは王都に出向いた時に貰ったもんだ。たぶん高価な物なんだろうな。」
「そんな高価なもの頂いて大丈夫だったんでしょうか…?」
紅茶を淹れる際、目の前にあった茶葉を適当に使ってしまったのを軽く後悔したエマ。
「どうせあっちに行ったらまたいくらでも調達できる。いくら飲んだって構わねぇよ。」
「ならよかったです。気の利く方がいらっしゃるんですね。」
「あいつらの自己満だろ。俺は紅茶が好きだから遠慮なく頂くがな。」
「そうなんですね。」
自己満とは…?
リヴァイの言っている意味がよく分からなかったが、そこは今は掘り下げなくていいかと当たり障りのない相槌を打った。
「それより、昨日の立体機動装置の訓練はどうだったんだ?」
「え、知ってたんですか?!」
「訓練所でハンジと居るところを見たからな。」
いつの間に見られてたんだ…
隠してた訳じゃないから別にいいんだけど、あまり目立たないように行動していたのに気付かれてたなんて。
団長もかなりのエスパーだけど、この人もなかなか鋭い。
「そうだったんですね…いや、純粋にかっこいいと思いましたし、なんだか美しささえ感じてしまいましたよ。」
リヴァイのことを思い出しながら言ったのだが、そんなことまで本人を前にさすがに恥ずかしくて言えない。
「巨人を倒すための武器とはいえ、開発した人はめちゃくちゃセンスがあったんじゃないかと。」
「面白いものの見方をするんだな。さすが異世界から来た奇行種、ってとこか。」
「それって褒めてるんですか?貶してるんですか?」
「どっちだと思うんだ?」
「そこはぜひ褒められてると思いたいです!」
「フッ。奇行種呼ばわりされて褒められてると思うのか。やっぱりお前は奇行種だ。」
「ひどい!貶してたんですね?!」
「そんな不満そうな顔をするな。
仕方がないから褒めてやったということにしておいてやる。」