第32章 北の地にて ※
「エマ…最後まで綺麗にしろ。」
それがどういう意味なのかエマにはすぐ分かった。
なんて言ったって自分も今さっき、“最後まで”綺麗にしてもらったのだから…
でも最後までと言うことはつまり…つまりリヴァイさんの……っ!
こういうリヴァイの強引さはもう慣れっこだが、エマは色々余計なことを考えてしまいなかなか頷けない。
でも自分だけしてもらって リヴァイにしないというのはどうなのか…
エマは雑念を振り払い 勇気を振り絞って返事した。
「わ、わかりました…」
「よろしくな」
リヴァイは冷静だが、鏡越しに交わる視線は熱を帯びている気がした。
背中はもう終わってしまったので後は前だ…
腰掛けるリヴァイの正面に立て膝をつくと エマの目は小さく見開かれた。
ずっと意識して見ないようにしていたものが見えてしまったのだ。
リヴァイの中心で重力に逆らい上を向くソレ。
白い肌に似つかわしくない色。大きく膨張しその存在をこれでもかと主張している。
「し、失礼します…!」
目のやり場に困りすぐ逸らしたけれど恥ずかしくて顔は見れず、エマは徐にリヴァイの手首を持ち上げ洗い始めた。
湯船から出てからエマの心臓は壊れるんじゃないかというほど激しく打ちっぱなしだ。
余計なことはなるべく考えないよう手元だけに集中し黙々と動かすが、それもそれで困ることがあった。
リヴァイさんの腕…やっぱり逞しいな。
この浮き出た太い血管もかっこいい…二の腕の筋肉も隆々としてて…すごく男らしい…
こうしてリヴァイの躰に触れていると、改めてどこもかしこも魅力的だなと思う。
完璧なまでに鍛え上げられた肉体はやはり息を飲むほどの美しさだった。
そしていつもこの逞しい腕で、躰で抱きしめてくれているのかと思うと途端に愛おしい気持ちが湧き上がり、飛びついてしまいたくなりそうだ。
そんな衝動をぐっと抑えながら、エマは懸命に手を動かした。
足を洗っていると柔らかく髪を撫でられる。
上を向けば目を細めたリヴァイと目があった。
「気持ちいですか…?」
「…あぁ」