第32章 北の地にて ※
「あ?」
しかしリヴァイは不服そうな表情だ。
「だって無理ですよ!」
「何が無理なんだ。」
「何がって…」
いや分かるでしょ…!!
「あの、十分綺麗にしてもらったしすごくいい思いもさせてもらったのでもう十分です!」
どうにか終わらせてもらおうと苦し紛れに話してみるも、リヴァイは引いてくれなかった。
「何言ってる。ここまでやったんだから最後までやらせろ。」
「さいご…!」
「そうだ最後までだ。俺は綺麗にすることに関しては完璧にやらねぇと気が済まねぇからな。」
真顔で言ってくるリヴァイさんが怖い!
まさか私の恥ずかしいって気持ちは一ミリも理解されてないの…?
普段はもの凄く察しがいいのに今日はまさかの鈍感ですか…?!
「あっちょっ!」
ああでもないこうでもないと考えているうちに腹に掌があてがわれ、優しく円を描きながら少しずつ移動する。
「ふっ、くすぐったっ」
「…だろうな」
脇腹から上へと滑ると身を捩ってしまう。
しかしリヴァイは気にすることなく脇の下から乳房へ手をスライドさせた。
「っ!!」
下乳に沿って滑り掌全体で乳房全体を優しく撫でられる。
決していやらしい手つきではない。リヴァイは純粋に洗おうとしてくれているのだ。
しかし分かっていても自分の中の情欲は少しずつだが確実に刺激されてしまう。
必死に違うと言い聞かせても、骨張った手が肌を撫でれば撫でるほど身体は火照っていく。
もう、もういい…やめて…
左胸を撫でる手に、轟く心音が伝わっていないかひやひやする。
「エマ」
「ん、なに……!」
返事した自分の声が色めいていることにエマは驚いた。
「気持ちいいか?」
「…え?」
それは、どういう意味で…
すでにエマの思考は淫欲に侵され始めていて、リヴァイの質問を変な風に理解してしまいすぐに答えられない。
「どうなんだ?」
しかし抑揚のない声は無情に突き刺さる。
「気持ちい…です」
エマは今自分にできる精一杯の平常心を保って返した。もちろん“いやらしくない意味”で、だ。
しかし返ってきた言葉に身体の燻りは一段と激しくなってしまうのだった。
「そうか…ならもっと良くしてやらねぇとな…」