第32章 北の地にて ※
ゆったりしたワンピースは簡単に頭をすり抜けた。
あたふたしているうちに手際よくブラも外され、慌てて胸を隠せば今度はショーツに指がかかる。
「っ自分で脱げますから!!」
「…もたもたすんなよ」
さすがに下は恥ずかしすぎると必死な形相で訴えると、リヴァイは小さく息を吐きながらすりガラスの向こうへ消えていった。
エマは頬を真っ赤に染めながら大急ぎで脱ぎ、ペンダントを洗面台の脇に置くとその後を追った。
「お…またせしましたぁ…」
浴室に立ち込める白い湯気。
靄の間から朦朧と現れた恋人は湯船の縁に浅く腰掛けていて、下から上へ視線が這ったあと何故か不服そうに眉間に皺が寄った。
何か問題でもあっただろうかと目を泳がすと顎で指図される。
「それ外せ」
「え?」
ここは今夜泊まる部屋の浴室。
そう、あの温泉以来、今からリヴァイと二人でバスタイムなのだ。
「体に巻いてるやつだ。オンセンであんなに大胆なことしといて今更初心な真似するなよ…」
リヴァイは一度一緒に入ったし気にするなと言いたいようだが、エマからすれば“まだ”2回目。
それに温泉は夜の露天で照明も薄暗がりだったし、普段交わる時は暗くして欲しいというエマの要望に応えて月明かりのみだ。
それが今は煌々と照る灯りの下。恥ずかしくないわけがない。
「そんな!急に無理です!恥ずかしいもんは恥ずかしいです!」
「却下だ。そんなぶ厚いもん巻いてちゃ抱き心地が悪いだろうが。」
「っ…!」
抱き心地って…この人はまたサラッと恥ずかしげもなくこんな台詞を…
これから湯船の中で繰り広げられる事を想像し、エマの胸は勝手に期待を寄せまた頬に熱が集まる。
やっぱり外さないとダメなのか…ならばせめて…
「じゃあ湯船の中でとってもいいですか?!」
「どうせ取るなら今でも一緒だろ。ピーピー喚いてねぇでとっとと外せ。」
「う……分かりましたよ…」
ギロリと睨まれ気圧されたエマはとうとうバスタオルを取り払った。
リヴァイとまともに目が合わせられず俯きながらそそくさと湯船に浸かる。
遅れてちゃぽん、ともうひとつの入水音が浴室に響いた。