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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第32章 北の地にて ※




「目を瞑れ」

「え?」

「いいから瞑れ。」


真剣な表情を前にどういうつもりなのかなんて聞けなくて、エマは言われたままに瞳を閉じた。


視覚がなくなると自然と研ぎ澄まされる聴覚や触覚。

エマにはリヴァイの思惑が皆目検討もつかず、ただドキドキソワソワと鼓動を高鳴らせながら待った。




しんと静まり返った畔。

草を踏み込む音がして、空気が揺れる気配がして、首の後ろを何かが掠めて。









「開けていいぞ」



ゆっくり瞼を開けると、目の前には眩しそうに目を細める恋人の顔。エマは首の後ろに手をやった。



チャリ…



指先に触れたのは硬い金属の感触だ。
ハッとしす胸元へ視線を移せば、その中心で淡いピンク色が優しい光を放っていた。


「……これ…っ」


突然の出来事に声は上ずるがそんなの気にする余地もなく、エマは前のめりでリヴァイの顔を見る。

驚きを隠せない少女にリヴァイは穏やかな声で話し出したのだった。



「それは俺の気持ちだ。」


「!!」


「エマ。俺はこの先もずっとお前を愛すし大切にする。そのネックレスはこの想いを形にしたものだと…そう思って受け取ってほしい。」


「……リヴァイ、さん…」



泣きそうな顔をして飛び込んだエマは、リヴァイの胸にしがみつくように両手で服を握り顔を埋めた。

リヴァイはその小さな身体を抱きながら、人知れず照れ隠しするようにそっぽを向いた。



「何となく付けちまったが…そういうの身につけるのが苦手だったらただ持っといてくれりゃ!!……っ」



話の途中で突然 唇に押し当たったのは柔い感触。

見開いた目に飛び込んだのは伏せた黒く長い睫毛と、シミひとつない陶器のような肌。

そして少し背伸びをしたエマの両手が包んでいたのはリヴァイの頬だ。




ぶつかるように重なった唇は雰囲気の欠片もないようなキスだが、そこからはエマの溢れる感情がひしひしと伝わり、リヴァイの心を揺するには十分すぎるほどだった。



「……んっ」


少しして離れようとしたエマの後頭部をリヴァイは逃さまいと抑え腰を強く引き寄せる。

そうしてまた、紅く色付いた唇を貪るように奪うのだった。

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