第6章 秘書のお仕事
それからリヴァイに書類の処理方法を教わりながら、午前中いっぱいは二人で黙々と執務をこなしていった。
最初はあれこれ確認しながらゆっくりと作業を進めていたエマだが、一時間も経つとあらかた要領を掴み、こっちの文字を読むコツも掴んでいた。
そしてそれからの彼女の処理スピードにリヴァイは目を見張ってしまう。
スピードだけではない、正確さもだ。
エマが処理した物は一応リヴァイがざっと目を通していたのだが、全くミスがない。
教えたことを理解するのも早く、すぐに自分の中に落とし込んでいるようだった。
そしてただ淡々とこなすだけではなく、相手が円滑に仕事を進められるために常に考えて行動しているのも分かった。
書類の揃え方や置き方にまで気を配るところもそうだと感じる。
この手の仕事はこいつの天職なんじゃ…
リヴァイが思わずそう考えてしまうほど、エマの書類捌きは異端なものであった。
一一一一一一一一一一一一一一一一一
「んーっ!」
机に向かう手を止め大きな伸びをする。
時計を見ると、あと一時間ほどで夕食の時間になるころだった。
昼からリヴァイは訓練に行ってしまったため、それからはずっと一人で机に張り付いていた。
リヴァイの大きな机に少し間を挟んで置かれているエマの机は、エルヴィンのはからいで設置されたものだ。
3分の1は終わっただろうか。
このペースでいけば自分一人でもあと二日で何とかなりそうだ。
書類には難しい専門用語が使われているものも少なくないが、今まで散々勉強していた甲斐があって理解に苦しむことはそれほどなかった。
元々勉強は嫌いではなかったが、今までこんなに机に向かったことがあっただろうか。
いやたぶんない。
だが嫌な疲れを感じることなく、寧ろ清々しい気分に近かった。
誰かの役に立っていると実感しているから、身体は疲れていたとしても精神的な満足感のほうが大きいのだろうか。
「そういえばお昼から何も飲んでないや。」
集中を切らしたエマは思い出したように喉の乾きを感じ、仕事を中断して水飲み場に向かおうとした。