第6章 秘書のお仕事
翌朝一
朝食後すぐにリヴァイの執務室に来るように言われていたエマは、食事をかきこむように終え急いで向かった。
少し息を切らしながら執務室の前にたどり着くと、一呼吸おいてドアをノックする。
「エマです!」
すぐに返事があったのでドアを開けると、部屋の手前に置かれたソファに座って紅茶を啜る部屋の主の姿があった。
この間も思ったが独特なカップの持ち方だ。
「おはようございます、リヴァイ兵長!」
「あぁ。早かったな。」
「いても立ってもいられなくて。」
「元気がいいのはいいことだが、あまり最初から飛ばすと後が持たねぇぞ。」
「大丈夫です!たくさん頑張らせてください!」
「それは頼もしいな。なら遠慮なくどんどん任させてもらおう。」
リヴァイはそう言うと、奥の大きなデスクに視線をやった。
「まずはアレだ。アレを次の休みまでに全て処理しなきゃならねぇ。」
「あれを、全部…ですか。」
デスクの上には物を書くスペースはほぼ残されていないんじゃないかという程の紙の山があった。
「そうだ、全部だ。」
次の休みって…今日を入れてあと3日しかないじゃないか!
ていうかこの量を兵長1人で捌こうとしてたのか…?
「兵長…私…」
「なんだ、もう怖気づいたのか?」
目の前の膨大な書類を見て俯いて頼りなさそうな声を出すので、リヴァイはその顔を覗き込もうとする。
しかしその時、バッと顔を上げたエマと視線がぶつかって
「俄然やる気が出てきました。」
とニヤリと口端を上げていたのだ。
その目はやる気に満ちていて、まるでこの状況を喜んでいるようにも見えた。
リヴァイは思わず目を丸くする。
自分にとって執務なんて鬱陶しさしかないものだから、予想とは正反対の反応が返ってきたのに驚いてしまった。
こいつはドMなのか?
「…そうか。ならお前のやる気が続いてるうちにコレを片付けるぞ。」
「了解しました!」
リヴァイはエマのことを少しどころではなく、だいぶ変わった奴なのかもしれんと思いながらも、残りの紅茶を流し込んでゆっくりと立ち上がった。