第1章 出会い
「ならまずは、その格好をどうにかしねぇとな」
「格好?」
「壁内でそんな服を来ている奴は見たことない。さっきも言ったがここは数百の兵士が寝食を共にする兵舎だ。目立ってこれ以上面倒なことになるのは御免だからな」
さっきから目の前の状況を整理するのに忙しくて服装なんてまったく気にかけていなかった。よく見たらいつも通っている高校の制服を着ている。
二本のラインが入った大きな襟に、胸元で白いリボンが結ばれた上に、下は膝上丈のプリーツスカート。色は上下とも紺色で統一されている、セーラー服だ。
……そうか、この世界には制服はないんだ。
この部屋の作りもそうだけど、自分が元いた世界とは文化もかなり違っているみたいだと思った。
「ひとまずこれを着ておけ。少し大きいと思うが。夜が明けたらちゃんとした服を用意する」
リヴァイさんはそう言いながらグレーのロングTシャツと黒いパンツをタンスの中から取り出し、私に手渡してくる。
「部屋の奥に浴室がある。そこの脱衣場で着替えてこい」
「あ、はいっ、ありがとうございます!」
*
「ふぅ……」
色々とぶっ飛び過ぎていて何から考えれば良いのかわからない。でもまずはこの世界のことを知らなければ、元の世界に帰る方法も探せないだろう。
とりあえず今はあのリヴァイという人だけが頼りだ。
背はそんなに大きくないのに鋭い目つきと粗暴な態度から醸し出される威圧感に最初はたじろいだ。でも案外悪い人ではなさそうで少し安心している。
だって、突然起こったこの理解不能な事態を即座に受け入れて、手助けしてくれようとしているんだから……。
実は、すごく優しい人なのかもしれない。
エマは脱衣所で着替えながらそんなことを考えていた。