第31章 可愛い我儘?
「…え?!」
「何つってたんだったか?俺とどうとか…」
見下ろすリヴァイの顔はどこか楽しげだ。
こう言う時はいつものアレだ、私をおちょくって反応を楽しむ気なんだ…
「何でもないです!」
こんな、本人に言わされる形で言うなんて絶対に嫌だ!
エマは一生懸命なんでもないフリをしたけれど、薄っぺらい誤魔化しなんてリヴァイにはバレバレである。
「よく聞こえなかったんだが、教えてくれよ。」
「だから何も言ってませんよ?!大体、リヴァイさん絶対聞いてましたよね?!なのに何でわざわざまた言わせようと」
「ほう、やっぱり俺のこと何か話してたのか。」
「っあぁ!!」
しまった…ついムキになって余計なことまでぺらぺらと…
自ら墓穴を堀り落胆の表情を見せるエマにリヴァイはまた笑った。
さっきから一人焦って百面相を披露するエマが可愛くて仕方がない。
「お前は本当に見てて飽きねぇな、エマよ。」
「んもう!からかわないでくださいよ…」
「馬鹿、褒めてやってんだ。それで?俺の部屋で壁に向かってボソボソと何話してやがった?」
白く骨張った指がくるくると毛先を巻きつける。
エマはされるがままで、じっと見据える三百眼をただ見つめ返すことしかできなかった。
いつもこうなのだ。
どれだけ抵抗を試みても、毎回リヴァイの意思に逆らうことはできず失敗に終わる。
そして今回も…
「俺には言えないようなことか?」
「ちっちがいます!」
「ほう…なら言ってみろ。ちゃんと聞いてやる。」
こうやって落ち着いた低い声に導かれるようにして、私は大きな羞恥心を抱きながらもバカ正直に話してしまうのだから。
「リ…ヴァイさんと、どこか行きたいです……何か思い出作りたい…」
絞り出すような声だが目と鼻の先のリヴァイの耳にはしっかり届いただろう。
でも真顔で見つめたまま黙るもんだから、自分の発した言葉がどんどん恥ずかしくなって見る見るうちに頬は上気してしまう。
そして同時にフツフツと湧く後悔の気持ち。
あぁ…絶対うざったいって思われた…
そりゃそうだよね。忙しいもん、嬉しいなんて思わないよ。
やっぱりわがままなんて言うんじゃなかった…