第31章 可愛い我儘?
「リヴァイさん!も、もしよかったら今度…私と遊びに行ってくれませんか?!」
茶色の濃淡に向かってエマは何やらブツブツと独り言を繰り返していた。
ハンジと話をした数日後の夜のことだ。
うーん、なんか堅いな…
「私…リヴァイさんとデートしたいです!」
これだと直球すぎるか…
なんて言うのがいいのか分かんないよ…
リヴァイさんを不快な気分にさせず、なるべく自然に言いたいけど難しい。
ハンジに、わがまま言ってみます宣言してから何日も経ったが結局まだ言えていない。
“デートしてみたい”というたった8文字が、本人を前にすると気恥しさとやはり鬱陶しいと思われるんじゃないかという不安が勝ってしまい、全然声に出すことが出来ないのだ。
でも言葉にできないほどエマの中ではデートしてみたい気持ちがどんどん膨らんでしまって、彼女自身がそろそろ限界だった。
どこでもいい。何でもいい。
少しだけいつもと違う“特別な時間”を過ごしてみたい。
「リヴァイさんと思い出作りたいな…」
「エマ」
「えっ!?あっ!リヴァイさんちょっ!いるなら声掛けてくださいよ!!」
壁の茶色い木目からギュインと視界を180度回せば、真顔で立つ恋人の姿が。
予想だにしないタイミングでの本人の登場にエマの頭は大混乱だ。
「今声掛けただろうが。」
「あぁっそうですよね!でもいつの間に?!音もしなかったしびっくりしすぎて心臓止まるかと!!」
「おい少し落ち着け。俺はたった今普通に入ってきただけだ。お前が聞こえてねぇんだろ。耳クソでも詰まってんじゃねぇのか?」
「詰まってないです!!」
あまりの動揺に下品な冗談にもつい真面目に返してしまった。
今来たと言うことはさっきの練習はギリギリ聞かれてなかっただろうか…
焦りと不安で激しい動機に見舞われそうだ。
「どうした、じっとこっち見て。」
「え?!見てました?!ごめんなさい別に何も…」
「…ハッ、お前は本当に分かりやすいな。」
動揺を必死に隠していたつもりだがどうやら無意味だったらしい。
トン、と背中が壁についた。
口角を上げ余裕そうな顔に見下ろされる。
「なぁエマ…さっきの言葉もう一度聞かせろ。」