第31章 可愛い我儘?
「デートは…たぶんしたことないと思います…」
結局エマの中で、あの温泉旅行はデートではないと結論づけると、ハンジからまたも驚愕の雄叫びが上がる。
「デートの誘いのひとつもしないなんて何してるんだよリヴァイは!エマもエマでしたいと思わないの?!」
「ま、まぁもしできたら嬉しいなとは思うけど…」
そりゃもちろん、誘ってもらえたら嬉しいに決まってる。
でもリヴァイは忙しく休日も仕事をしていることが多いから、わがままを言ってリヴァイの負担になるようなことはしたくない。
それに今のままでも十分愛されてるのは伝わっているし、決して我慢してる訳でも不満がある訳でもないのだ。
「今のままで不満はないですよ。それに忙しいリヴァイさんの負担にはなりたくないし…」
「もーう!エマは欲がなさすぎだし謙虚すぎ!彼女なんだからわがまま言ったっていいのにー。たまにはその方がリヴァイも嬉しいよ絶対!」
「え?!リヴァイさんが嬉しい…?」
ハンジの発言にエマは素っ頓狂な声を上げてしまった。
わがままなんて言ったら鬱陶しがられるだけなんじゃ、としか思えないけれど…
「そうそう!男はね、たまの女の子のわがままは絶対嬉しいし可愛いって思うし、聞いてあげたいと思うもんだよ!エマみたいに謙虚な子なら尚更!」
「そんなこと思います?!」
「思うね!間違いなく!リヴァイだって例外じゃないはず!」
強い確信を持って言い切るハンジに最初は半信半疑だったものの、何度も言われるうちに段々エマ自身もその気になってきてしまった。
普段自分から欲求を伝えることはほとんどない。
それが、“デートがしたい”なんて言ったら一体リヴァイはどんな反応をするのだろう。
鬱陶しいと思われないかという不安は拭いきれないが、ハンジの言う通り嬉しいと思ってくれるのなら、素直に伝えてみてもいいかもしれない。
「ハンジさんがそんなに言うなら今度、頑張って伝えてみようかな…」
今のままでも不満はない。
でもやっぱり、デート出来るなら一度はしてみたい。
その思いをリヴァイにぶつけてみようとエマはこの時心に決めたのであった。