第31章 可愛い我儘?
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「おはようエマ!」
「あ、おはようございますハンジさん。」
隅の席で朝食を摂っているとトレーを持ったハンジがやってきた。
今日はモブリットは一緒ではないようだ。
「エマ、あれからもう平気?辛くない?」
心配そうな顔が覗き込む。
あれから…というのはたぶん三日前の書庫でのことだろう。
あの時はまともに話せる状態じゃなかったのもあるが、話す間もなくリヴァイに連れ去られてしまったのだ。
それから今日までハンジとは顔を合わす機会がなかったから、きっとずっと気にかけてくれてたのだろう。
「私はもう平気です!心配かけてごめんなさい。」
申し訳ない気待ちだったがでも明るく答えると、ハンジは安心したように笑った。
「ううん気にすることないよ。元気そうで良かった!」
「あの、それでアデルの容態は…」
エマはアデルの様子が気になっていた。
リヴァイは何かしら知っていただろうが、さすがに彼の前でアデルの名前を出すのは気が引けて聞けずじまいだったのだ。
「前歯が欠けたのと打撲ぐらいで命に別状はないよ。あれだけボコボコにされて肋骨数本イってるかと思ったけど、屈強な少年で良かったよ。」
「そうですか…大事に至らなくて良かった」
「そうだね」
“リヴァイったら殴るだけ殴っておいてエマ連れて出てっちゃってさ〜”と苦笑しながらパンにかぶりつくハンジを見やった。
確か負傷したアデルはエルヴィンとモブリットで医務室へ運んだと聞いている。
ハンジは気にしてなさそうな素振りだが、エマとしては全く関係のない人たちを巻き込んでしまい今更ながら申し訳ない気持ちが沸々と湧いてしまった。
「皆さんにご迷惑かけて申し訳なかったです。」
「その台詞はエマじゃなくアデルに言ってもらいたいかなぁ…あとリヴァイにもね。まぁ本当にエマのことが大切だからこそあそこまでやっちゃったんだろうけどさ。」
「兵長にもたくさん心配をかけてしまいました…」
「君は被害者なんだから自分の責任だなんて思わないの!でもさ、不謹慎かもだけどあれがきっかけで二人が仲直りできて私は安心したよ。」
“え?”と、スープに落としていた目線を上げると、柔く笑うハンジの手が頭に乗った。