第29章 足音
「今日は気になっていることをエマに直接ぶつけられるチャンスだ。とはいっても後ろには兵長がいるから、くれぐれも声のボリュームは落とすように。」
「え…?…え?!」
慌てて背後のエルドを振り返ると、ニコニコととても楽しそうな顔。そしてこの人ももれなく顔が真っ赤。
これはもしかしなくてもマズイ展開なんじゃ…?
エルドの“兵長”というワードに、何を聞かれるのか大方予想がついてしまったエマ。
いや、別に関係を隠すつもりはないしリヴァイさんだってその辺は全く気にしないって言ってたんだけど…
何も一同が集まる場所でこんなことしなくても!!
と言いたかったがエマを囲っているのは期待を存分に含んだ視線を向ける十数人の兵士達。
一対十数人じゃどう足掻いたって今すぐ逃げられる術なんてない…
そういえばこの間飲んだ時も酔っ払ったエルドさんにリヴァイさんのこと色々問い詰められたっけ……この人も酔うとなかなか厄介だ。
だが時すでに遅し。
オルオを見ると苦笑いを浮かべながら小さく両手を合わせているが、彼もまた真っ赤に頬を染め楽しげな様子。
ダメだこれは…!!
「ということで質問がある奴は一人ずつ順番に!」
酔っ払いのエルドに勝手に仕切られて、とうとう質問会は始まってしまった。
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「で!兵長はどんな風に愛を囁くの?!」
「い…いやぁそれは…」
エマの意思は全く無視された質問会が始まってまだ10分足らず。
全方位から矢継ぎ早に飛んでくる質問(もはや尋問に近い)に、エマは早くもギブアップ寸前だった。
この間リヴァイ班の皆にされた質問攻撃よりも困ることばっかり聞かれるなぁ…
こんな質問絶対答えられないよ…
困り果てたエマだったがこのままでは埒が明かないとついに覚悟を決め、一か八かある作戦に出るのだった。