第5章 調査兵団の実力
「すみません!誰もいないと思っていたところから突然声がしたので、驚いてつい…」
「人を幽霊みたいに言うなよ。」
「そ!そんな酷いことは言ってませんよ!」
「言ってはないが思ってはいたのか?」
「お!思ってもいません!兵長は人間です!」
「なんだそのセンスのねぇフォローの仕方は…」
冗談めかして言われた言葉についつい自分も乗っかってしまうと、仏頂面のリヴァイの表情が僅かに緩まって、2人の間に少し穏やかな空気が流れた。
しかし続けて発せられたその言葉にエマはハッとする。
「思ってたよりも元気そうだな。」
「!!
あの…私この間は兵長にすごく失礼なことしをてしまいました…よね…その、ごめんなさい。」
この間執務室で口走ってしまった、勘違いしていたリヴァイへの気持ちだ。
しかも最後は逃げるようにリヴァイの元を立ち去ってしまった…
「あの時私どうかしてました…後で冷静になったら、なんて馬鹿なこと言ったんだろうって…反省してます。」
申し訳ない気持ちで頭を下げて謝る。
「別に気にしてない、顔を上げろ。」
頭上に降る抑揚のない声に、エマはゆっくりと顔を上げる。
そこには相変わらずの鋭い三白眼があったが、その眼差しは決して自分を怒ったり嫌ったりしていないことはすぐに分かった。
「よ、よかったです…」
エマはその顔を見て安心したように、表情をへにゃっと崩して安堵の笑みを零した。
「泣きそうな顔したかと思ったら今度笑い出すか、忙しいやつだな。」
「すみません…でも、安心して。執務室での一件で兵長には絶対嫌われたと思ってましたから。」
「いきなりペラペラ喋り出したと思ったら、俺から逃げるように部屋を出ていくしな。」
「あ、や、やっぱり怒ってますか…?」
「気にしてないと言っただろ。お前の事も別に嫌いになんかなってないしな、もうその話は終わりだ。」
また不安そうにし出すエマにリヴァイははっきりとそう伝えると、“それよりだな…”と続けざまに話し出す。
「お前に明日から執務補佐を頼みたい。俺はそれを言いに来た。」
「…え?」
さらっと言われた言葉にエマは思わずリヴァイの顔を二度見する。
「執務補佐…?明日から?!」