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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第28章 長い夜 ※




スーツの肩もシャツの胸元もエマの涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。
けれど今はそんなことどうだっていい。


「ごめ、なさ…リヴァイさんの事っ、恋人ならちゃんと分からなきゃ、いけないのに…ワガママいって困らせてっ…」

「別に我が儘言ったって良いだろ?俺の前で完璧でいようとするな。嫌なら嫌だと、はっきりぶつけてくれたらいい。」

「うっ……いっ、いやでしたっ…リヴァイさんが知らない女の人のところに行っちゃうの…嫌でした…っ…」


泣きじゃくる子供を宥めるように言うと、エマは心の内に溜めていた感情を曝け出し、ついにはしゃくりを上げて泣き出した。

リヴァイは頭や背中をゆっくり擦り、溢れるその思いをひたすら受け止める。



「お前に黙ってこんな任務を続けていたことがそもそもの間違いだった。結局泣かせちまったしな…お前と一緒になった時点できっぱり止めるべきだった。」

「うっ、うう……でもっ、…嬉しかった……相手の人と…話をしてくれて……うっ」

「もう何も心配しなくていい。俺が愛しているのも触れたいと思うのもお前だけだし、俺の心も体もお前だけのもんだ。」




自分は公に心臓を捧げた兵士だ。

この世から巨人を絶滅させるその日まで、人類のために戦い続けると心に決めた兵士。

巨人と戦って死ぬつもりなどさらさらないが、もしかしたら作戦の末に自分が死ななければいけないことがあるかもしれない。

それは覚悟の上。だが…


心まで捧げたわけじゃない。

今、俺の心はいつだってエマを想い、エマのために動き、エマのためにある。

例え離れ離れになったとしても、自分が死んだとしても、心だけはずっとエマの傍にいると誓う。

そして朽ち果てるその時まで、この体でエマを守り、精一杯の愛を注いでやりたい。



でももしかしたらまた、今回のように空回りすることもあるかもしれない。

エマに黙って令嬢と会っていたのも“良かれ”と思ってやったことだが、結局エマを傷つけてしまっていた。

自分がいいと思っても相手は良く思わないかもしれない。
他人を思いやるのは簡単ではない。


だが別に間違えたっていい。

間違えたらこうして気持ちをぶつけ合い、次に生かせばいいのだから。






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