第28章 長い夜 ※
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ーはっ、ははは!ははははっ!
エリーゼは「人生をかけて守りたい奴がいる」と言ったリヴァイを笑った。
そしてその直後“嘘つきの惚気なんて聞きたくない!もう顔も見たくない!”と泣きながら、リヴァイを追い出し乱暴に扉を閉めたのだ。
驚くほど呆気ない終わり方だった。
これでもうノルトハイム家からの資金援助は望めなくなるだろう…
エルヴィンにもどやされるかもしれない。
そんなことを考えたが、それとは裏腹にリヴァイの心は清々していた。
自分にもエマにもこれ以上嘘はつきたくなかった。
だからこの煩わしい関係をきっぱりと断ち切ることが出来て良かったと素直に思えたのだ。
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「だから今日で全部終いだ。あの令嬢にも、他の貴族の女にも今後は一切会わない。」
リヴァイの言葉はとても強かったし、彼の目を見ればどれだけ本気で言っているかなんて一目瞭然だった。
でも…
「…でも…大切な任務なんじゃ…」
「俺が何より一番大切にしたいのはエマ、お前だ。
どんな理由であれお前を傷つけるような真似だけは絶対にしたくない。」
まだ不安そうなエマをリヴァイはもう一度優しく包んだ。
「リヴァ…さ……」
「辛い思いをさせて悪かった。」
一度は止まっていた涙がまたエマの頬を伝う。
けれどそれは先のように辛くて流れたものではなくて、強い安心感から溢れた涙だった。
「う゛っ…ううっ……」
胸の中で子供のように泣きじゃくるエマの頭を、リヴァイは優しく撫でる。
エマは任務のことがずっと気になっていたと言っていた。
エルヴィンに聞くまで確証こそなかったが、恐らく色々憶測はしていたんだろう…
今日までその不安をひた隠しにして振舞ってたってのか…
「ずっと一人で我慢してたのか?」
問うとエマはコクリと頷いて、その胸の内をゆっくり語り出した。
「…ちゃんと、しなきゃって………でもリヴァイさんがっ、他の女の人と…って考えただけで…頭おかしくなっちゃいそで………ほんとのこと、知りたかった……それで、ほんとは…ほんとはっ、行かないでって言いたかっ…」