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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第28章 長い夜 ※




力を増す抱擁。


しかしリヴァイの任務を受け入れることが出来なかった自分の不甲斐なさと、やはり令嬢の所へ行っていたのは事実だったというショックで、エマの胸は抉られるようだった。


「……今日…会ってたんですね…」

「あぁ」


端的に告げられた現実に、エマの目からまた大粒の涙が溢れる。
大量の涙と鼻水がリヴァイの肩を汚してしまっているが、もうこれをどうやって止めたらいいかなんて全然分からない。



リヴァイは徐に身体を離し、彼女を見た。

俯いたエマとは目線は合わなかったが、先のように無理やりこちらを向かすようなことはせず、小刻みに震える頭頂部を見つめながらその口を開いた。



「エマ、苦しめてすまなかった。」

「……い、え…っだいじょ」
「女とは寝てない。」


「……っ!」


被せるように発せられた二言目を聞いた瞬間、エマの震えがピタリと止まる。
そして目線だけをゆっくりリヴァイへ向けた。


今…なん、て…?


「屋敷へは行ったが話をしただけだ。こんなクソみてぇな茶番は今日でお終いだとな。」

「そ…」


そんな…どうして…?


話を理解することができず恐る恐る頭を上げれば、リヴァイと視線が重なる。


「エマ。俺は元々この任務のことを話すつもりはなかった。言ったらお前が傷つくだけだと思ったからだ。だから自分の中だけで消化すればいいと、ずっとそう考えてきた。」

「すみませ…私が余計な詮索をしたか」
「いやお前のせいじゃない。これは俺の問題だ。」


謝ろうとしたエマを遮ってピシャリと言ってのけた。

エマはその真剣な目に押し黙り、続く言葉にじっと耳を傾けた。


「初めは任務を遂行するつもりだった…仕事だから仕方ねぇと、エマが知らなければそれでいいとそう言い聞かせてな。
だが例えお前が知らなかったとしても、どんな理由であろうと他の女を抱けば結局裏切ることになっちまう。
そんな愚かなことに、俺はいざ令嬢の屋敷に行くと決まるまで気がつけなかったんだ。」


リヴァイは眉間を少しだけ緩め、“それともうひとつ…”と続けた。


「お前以外を抱くなんて俺が一番耐えられなかった。お前しか抱きたくねぇし触れたくねぇと、今日心の底から思った。」



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