第28章 長い夜 ※
リヴァイは令嬢と寝た
その変えようのない事実が頭の中をぐるぐる回る。
エマは泣きそうなのをどうにかして堪えながら、とにかく話をした。
「結構鋭い質問ばかり飛んでくるから困りましたよー!“兵長って甘えてくるの?”なんて聞かれた時にはもうどう答えようかドギマギしちゃって!“想像にお任せします”って無難な返ししか出来なかったけど、大丈夫でしたかね?たぶん大丈夫ですよね?フフ!」
無駄に口数が増えているのも、無理やり上げた口角の筋肉がつりそうなのも気にしないようにして気丈に振る舞い続ける。
リヴァイと目を合わせることは出来なかった。
目を見たら、ギリギリのところで押し留めているこの涙はきっといとも簡単に溢れてしまうから。
だから綺麗に整えられた胸元のクラバットを必死に見ていた。
「エマ」
「どうしたんですかそんな怖い声出して…あ!もしかしてこの回答ナシでしたか?!すみません!私受け流すの下手くそで…はは!」
「エマ、こっちを見ろ。」
「え?リヴァイさんの顔カッコよくて直視するの恥ずか」
「エマ!」
頬を両手で掴まれて強制的に頭が上を向く。
その瞬間視界に入ったのは眉間に深く皺が寄ったリヴァイの顔だ。
でも不機嫌なわけでも怒っているわけでもない。
彼はただ苦しそうな、そんな顔をしていたのだ。
頬を掴まれたまま視線が絡み合うこと数秒。
そのあとリヴァイは苦しそうに眉間に皺を寄せたまま、エマへゆっくり問うのだった。
「今日のこと…知ってたのか?」
「……」
「誰かに聞いたのか?」
「…っごめ、なさ…」
弱々しい謝罪とともに、はらりと零れた涙。
「団長に…聞いてしまいました……ずっと、気になってて…でも確かめるのが怖くて…リヴァイさんには、聞けなくて…」
一度溢れたそれはもう止めることなどできず、次から次へと頬を伝いリヴァイの掌を濡らしていく。
「すみませ……っ、任務だからって何度も何度も言い聞かせてるけど…なかなか上手くいかなくてっ…リヴァイさんの前でこんなっ、こんな情けない姿を…」
震える身体と嗚咽のせいで声まで震えてしまい、いたたまれなくなって下を向く。
しかしその瞬間、エマの身体は勢いよく抱き寄せられたのだった。