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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第28章 長い夜 ※





「お前のことは抱けない。」


揺れる瞳を見据えたままはっきりと告げると、エリーゼはまた傷ついた顔をした。


「…俺には、」
「待って。」


沈黙の後、言いかけたところで声が被さる。

強い口調で遮ったエリーゼからは、さっきまでの動揺は消えているように見えた。


「…ずっと、嘘をついていたの?」

「……」

「っ…貴方も今日を楽しみにしてくれてたんでしょう?だってこの間兵舎で会ったとき、頷いてくれてたじゃない…今度会うのが楽しみだって、私の言葉に…」

「………」

「あれも…今までのことも全部、最初っから嘘っぱちだったっていうの…?」

「…すまな」



―バチン!



言葉を遮るように乾いた音が響く。

左頬が一瞬熱を持ち、その後でじんじんと痛みが走った。



「ふざけないで!!私がどれだけ貴方のことを好きで…愛していたか知ってたくせに!!」


吊り上がった眉が端麗な顔を歪ませて、普段の気品溢れる佇まいからは想像もつかないような金切り声を上げる目の前の女は、怒りに満ち満ちていた。

しかし激昴するエリーゼとは裏腹にリヴァイはびっくりするほど冷静だった。


「いつも貴方のことだけを考えて…私がどれだけ貴方のために時間を費やしていたか分かっているの?!ねぇ!」

「………」

「貴方の…貴方のことが好きで好きで、本当に愛していたのに…」


ひとしきり叫び終えると今度は泣きそうな声で呟くエリーゼ。
震える声が虚しく空に溶けていく。

重い沈黙の後、リヴァイは静かに口を開いた。



「お前は」

落としていた目線を上げる。


「お前は…愛する者のために自分を犠牲にすることができるか?」

「は…?してるじゃない!貴方を待つ辛い時間は、十分自分を犠牲にしているわ!」

エリーゼは何を分かりきったことをという調子でリヴァイに向けて語気を強めた。


「そうだな…確かに好きな奴に会えず苦しむ時間は、ある意味自分を犠牲にしてると言えるかもしれん。
けどな、そんなのは所詮ガキの恋愛の話だ。」

「……どういうことよ」

リヴァイの一言に、エリーゼの眉間に再び皺が寄った。


「お前のそれは、“愛する者のため”ではなく自分自身のためのもんだ。」

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