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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第28章 長い夜 ※




だがあいつに…エマに出会ってからは違った。


あいつの声を聞くだけで胸が弾み、あいつが笑うだけで胸に温かいものが溢れた。

隣を歩くようになり、同じベッドで寝るようになり、朝起きたら“おはよう”と言葉を交わすようになり…見える景色も聞こえる音も全て変わった。


エマといるようになって、灰色だった日々が色鮮やかに彩られていくようだった。

エマのおかげで、喜びだとか楽しみだとかそういう感情を俺は思い出せたのだと思う。








「リヴァイ…兵士長?」


戸惑いを含んだような声で自分の名が呼ばれている。

俺は先のようなことを考えながら一ミリも動かずに、青白い手の甲に視線を落としていた。


「リヴァ……!」


女がもう一度名を呼びかけて漸く顔を上げたが、そこで声が途切れる。

ついさっきまで甘い期待を寄せていた女は今、目を真ん丸にして愕然としていた。



「……どうして、」


か細い声で紡がれた言葉は震えている。


「どうしてそんなに……哀しい顔をしてるの…?」


「………」


「…まるで、」



“泣いているみたい”



そう呟いたエリーゼは愕然としながら、震える指先をリヴァイの涙袋に添える。



いつも以上に眉間に皺が寄っている気はするが、別に水が頬を伝う感覚などない。

この女は何故自分のことを“泣いているみたい”などと言うのか。



「どうしたの?貴方らしくもないわ…」

エリーゼは何か気付いているようだったが、それを払拭するかのように無理やり笑っていた。

だがリヴァイが涙袋に添えられた指をゆっくり払うと、彼女は一瞬傷ついた顔をした。



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