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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第28章 長い夜 ※




一一一一一一一一一一


メイドの後ろを歩いて行き着いたのは、重厚な木製の扉。

扉の前で“失礼します”と頭を下げたメイドに軽く会釈をしてノックすると、高い声が迎えた。



「こんばんは。」


扉を開けると大きなソファに座る女が振り返る。

広い部屋にはソファとベッドのサイドテーブルの蝋燭が灯されただけで全く光は足りていないが、大きな窓から差し込む月明かりがその暗さを補うように空間を青白く照らしていた。


緩く手招きをされたので無言で女の元へ行き、促されるまま隣に腰を下ろすと、肘掛にもたれていた背中を起こして座面へ手をつき、グッと身体を寄せてくる。


「遠路遥々ありがとう。来てくれて嬉しいわ。」

「…暗いな」

「私、明るいのは嫌いなのよ。月の出る夜はこのくらいの方が落ち着くの。薄暗いけど、貴方の綺麗なお顔は十分見える。」

「………」

「今日も素敵よ、リヴァイ兵士長。」


嬉しそうに笑う女…エリーゼを、自分ははどんな顔をして見ているのだろうと思った。

明らかに口角は下がって眉間に皺が寄っていると思うが、それを素敵だと言うこの女の心理はよく分からない。



結局約束は断らずここへ来た。

今日この女との関係に決着を付けるために。

自分にもエマにも、もう嘘はつかないために。




「ねぇ、どうかしら?貴方のためにこの服、新調したの。」

着ている服が見えるように少し身体を引いて座り直すエリーゼ。

言われて初めて着目してみると、真っ白でゆらゆらと揺れるような生地にはふんだんにレースがあしらわれ、大胆に肩を露出させたデザイン。

気品溢れるエリーゼが着ればあまりいやらしさは感させないのだろうが、俺にはそんなことは心底どうでも良かった。



「お前がいいならそれでいいんじゃねぇか。」

「まぁ素っ気ない。でも今日は特別に許してあげる。」

「やけに機嫌が良いいんだな。」

「もちろん。だってこの日をどれだけ待ち望んでいたことか…
貴方とやっと、ここで二人きりになれるんですもの。」


ふふ、とはにかむ頬がほんのり赤い。

だがその顔を見てもやはりひとつも心が揺れ動くことはなく、徐々に火照りを伴う彼女とは対照的に、自分の体温は冷えたままだった。


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