第5章 調査兵団の実力
「それより、リヴァイ兵長とはどうだい?」
「えっ?!」
続けてモブリットから投げかけられた質問に、エマは驚いて声を上げてしまった。
あ、あぁ!仕事上の関係で上手くやれてるかって話か!
「兵長は慣れない私を色々気にかけてくれてます。最初は怖い人だと思ったけど…最近は皆さんから慕われてる理由が分かってきたような気がします。」
まだ仕事は頼まれたことないけど、言っていることは本当に思っていることだ。
「そうか。兵長が秘書をつけるなんて初めてだし、意外だって言ってる人たちもチラホラいて、実は今何かと注目されてるんだよ、エマ。」
「そうなんですか…!」
「兵長はプライベートなことは人に語らないタイプだから余計になんだけど、ついた秘書が可愛らしい女だってことで勝手に噂を立ててる奴らもいたよ。分隊長が叱ってたけど。」
そ、そんなことまで起きていたんだ…
今まで食堂ぐらいでしかここの兵士達と場を共にすることがなかったし、自分がどう見られているかなんて気にしていなかった。
いや寧ろ、まだ他の兵士には自分のことはそんなに知られていないだろうと思ってた。
でもよく考えたら、あの兵長の秘書なんだから皆が気にならないわけないか…
異世界の人間だという事実はバレてないけど、兵長との関係に変な噂を立てられては困るし、兵長だって困るだろう…
自分の気持ちも整理したばかりだと言うのに。
「ハハ、その噂は困りますね…」
「だろ?ここには大した娯楽もないからね、中には人の噂を立ててそれを楽しむ連中もいる。まったく悪趣味だよな。」
「そうですね…でも、私はともかく兵長が私なんかになびくなんてどこをどう考えたら想像がつくんですかね…」
「いや?俺はそうでもないと思うけど。実際エマはほかの兵士からも一目を置かれているし、くっつけたがる奴がいるのも分かる気がするな。」
「そ、それは褒め言葉と捉えても…」
「もちろん。兵長の傍なら大丈夫だと思うけど、何かと変人の集まる兵団だ。危険だと感じたら兵長や分隊長や俺にちゃんと言うんだよ。」
「危険…わ、分かりました!」
エマにはモブリットの忠告がいまいちピンと来なかったが、心配そうに話す彼を見てとりあえず迷惑だけはかけないようにしようと心に決めるのだった。