第5章 調査兵団の実力
「モブリットさん、今日はよろしくお願いします!」
「あぁ、よろしく。」
翌朝、エマはモブリットと訓練所まで歩いて向かっていた。
これからいよいよ立体起動装置の訓練をお目にかかれるとあって、エマはやる気満々だ。
「森の中にある巨人の模型のうなじを削いでいくのが基本の訓練になる。
少数の班ごとに別れて、味方と連携を取りながら仕留めるんだ。常に巨人と味方の動き、そして地形をよく見て一瞬で状況を判断しながら動く必要があるから大変だけど、実践を想定した大事な訓練だから皆もいつも心してやってる。」
「なるほど…なんだか難しそうな訓練ですね。」
モブリットの説明を受けて少し想像してみるが、あんな不安定な動きの中でたくさんのことを瞬時に判断しながら項を削ぐのは至難の技のように思える。
「実際に見た方が早いよ。
…それにしても秘書として働くだけで十分大変だろうに、ここまで熱心になるなんて君もなかなかだね。分隊長が君を気に入る理由が少し分かったよ。」
「ここで働くからには、少しでも多く知識を付けておきたくて…その方が仕事ももっとやりやすいかなって。」
「なるほどね。それは確かに言えてる。」
真面目なエマのことはモブリットにはなかなかの好印象のようだ。
2人は肩を並べて訓練所の道を進む。
陽が高くなってきて、朝の凍てつくような寒さが少しだけ和らいだ。
「モブリットさん、調査兵団は周りからあまりいい印象を持たれていないとハンジさんから聞いたんですけど、それはやはり本当なんですか?」
「壁外調査が行われればぼ毎回と言って良いほど犠牲者が出てしまうし、長年成果も乏しかったからね。
自分たちの血税を注いでる民衆からしたら、いつまでもぬくぬくと過ごしやがって、と思われても仕方ないかもしれないな。」
「そうなんですね…それでも自分の命を削ってまで人類のために戦うことはとても誇り高いことなのに…少なくとも私はそう思いますし、そんな皆さんを尊敬もします。」
真剣な顔で見上げて言うエマと目が合うと、モブリットはクスッと笑った。
「ありがとう。そう言ってくれると心が救われるよ。」