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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第28章 長い夜 ※




「エルヴィン団長」

「こんな時間に珍しいな。」

「そうですね、ちょっと外の空気を吸いたい気分で。」


そういえばこうして中庭で夜空を見上げるのは久しぶりだ。
リヴァイと付き合ってからはここにはほとんど来なくなっていた。


まだ真冬の頃、ここに座って二人で星を眺めて、たわいもない話をたくさんしたな…


なんてことを思い出しながら、“隣いいか?”と聞くエルヴィンに頷いた。

まだ兵服を着ているのを見てこの人はまたこんなに遅くまで仕事をしているのだろうかと思い、エマは“お疲れ様です”と声をかける。


「ありがとう。酒を飲んだのか?」

「はい、リヴァイ班の皆さんと……もしかして匂いますか?」

「少しだけな。」

「すみません…!」

咄嗟に謝るエマに、“どうして謝るんだ?”と笑うエルヴィン。

確かに謝ることなどないのだけれど、遅くまで仕事をしているエルヴィンの前で酒の匂いを漂わすなんて、何だかすごく失礼だと思ってしまったのだ。

それをそのまま伝えると、エルヴィンは“なんだそんなことか”と笑い飛ばした。


「たまの息抜きは大事だ。何も私に気を遣う必要なんてないよ。」

「ありがとうございます…」

優しい言葉に救われつつ、この人はちゃんと息抜きできているのだろうかとまた心配になってしまう。



「今日は月が綺麗だな。」

「そうですね…月がこんなに明るいの、私今まで知らなかったかもです。」

白く浮かび上がるエルヴィンの輪郭を見て気がつく。
満ちた月光の下では通った鼻筋も碧い目もはっきりと認識できる。

その碧目が一瞬自分を捉え、またゆっくりと空に戻したところまではっきりと分かった。




ふと、エルヴィンならリヴァイが今どこで何をしているのか知っているんじゃないかとそんな考えが過ぎった。


けれどそう思っただけで、聞く勇気は出ない。

だってもし知っていて、答えが憶測通りあのエリーゼという人の元へ行っているのだとしたら…


そこまで考えて、ふるふると頭を左右に振った。



やっぱり詮索するのはやめよう…


そう言い聞かせてエルヴィンに倣い空を仰いだ。

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