第28章 長い夜 ※
正直ダメと言われると思っていたからエマは舞い上がりそうだった。ずっとリヴァイ班の皆とは飲みに行きたいと思っていたのだ、念願叶って嬉しかった。
「今度はヘマしないように気を付けますね!」
気合いを入れるエマの頭を優しく撫でる手。それがするりと頬へ移動して、じっと見つめる三白眼と目が合った。
エマは無意識にその先を期待したが、その手はすぐに離れ、リヴァイの目線は真っ白なシーツへと移動してしまう。
「明日の夜は俺もいないから、あまり遅くはなるなよ。」
「え?」
「王都に用がある。泊まりがけになる。」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が大きく脈を打った。
「…団長と一緒ですか?」
「いや」
「そうなんですね…」
「…すまない」
「……ど」
どうして謝るのですか?
と聞こうとして口を噤んだ。
聞けない。聞いてはダメだと思った。
シーツを見つめたままのリヴァイの横顔があまりにも苦しそうに見えたから…
“エリーゼ・ノルトハイム”
“リヴァイが半年前から接待している令嬢だろう?”
“わざわざ逢いに来たってリヴァイに相当ご執心だね”
三日前、リヴァイが団長室を出ていった後に聞いた会話を思い出す。
“見ないんですか?お手紙。”
“後で見る”
“え?いいんですか?大事なお手紙とかだったら…”
“内容は分かってる“
リヴァイ宛に届いた、真っ白な封筒。
“彼ら…貴族達の相手をして兵団の資金援助をしてもらってるんだよ”
ここに来て間もない頃、ハンジから聞かされたリヴァイとエルヴィンの話。
そして夜会で見た、リヴァイの手を取り歩いていた、煌びやかなドレスのブロンド髪の女性の姿…
あぁ、そういう事かと思った。
断片的な出来事や会話が一本の線で繋がった気がした。
急速に胸が締め付けられる。とても苦しい。
けれど…
「泊まりがけで大変だと思いますけど、頑張ってくださいね!」
「あぁ…明後日の朝には戻る。」
彼は恋人である以前に、調査兵団の兵士長だ。
リヴァイさんの務めは、恋人である私が理解して当然のこと。
「わかりました!」
これは仕方の無いことで、自分が少し我慢すればいいだけ。