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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第28章 長い夜 ※





「今日はご機嫌があまり宜しくなさそうね。いえ…今日もと言うべきかしら。」

ウフフと口元に手を当てて笑う仕草はとても綺麗だ。


「悪いが元々こんな顔だ。」

「まぁ。けれどその顔決して嫌いじゃないわ。ねぇ?リヴァイ兵士長。」

「………」



リヴァイと背丈は同じくらいだが、ヒールの高い靴を履いているので自然と彼女の目線の方が上になる。

クスリと見下ろす瞳が何を訴えているのかはリヴァイにはすぐに理解できてしまう。



リヴァイは跪くと、エリーゼの細くか弱い手の甲に口付けた。



その場所へのキスは、相手への「敬愛」と「忠誠」を誓う意味を持つ。
彼女へはもう何度もしている行為だった。


「フフ、ありがとう。リヴァイ兵士長、好きよ。」


艶めいた唇がそっと、リヴァイの白い頬に触れる。


「相変わらず少しも嬉しそうにはしてくれないのね。」

「感情が表へ出にくいんでな。」

「フフ、いつも通りで安心したわ。だけど…」


唇が頬から耳へと移動する。
鼓膜に甘く囁くような声が流れ込んだ。


「三日後は、初めて貴方の色々な表情がたくさん見られそうね。」

「………」



風に揺れる花びらのように笑うエリーゼは絵画のように美しい。
だがそれを見てもリヴァイの心はひとつも揺れ動くことはない。


20歳になったばかりのエリーゼは見目麗しくて気品高く、清潔感に溢れている。
そして自身の思いを真正面からぶつけてくる素直で真っ直ぐな心を持つ女だ。

誰もが羨むような美貌と清らかさを持ち合わせているというのに、出会った時から今までリヴァイの胸は一瞬たりともときめくことはなかった。

しかしだからと言って彼女を蔑ろには出来ない。
兵団の運営を支援するためにも、自分は役目を全うし彼女の期待に応えなければならないのだ。



「屋敷にいらして下さるの、楽しみに待っていますわね。」

「……あぁ」


小さく手を振り、付き人に手を引かれながら馬車に乗り込んだエリーゼ。
付き人が一礼して乗り込むと馬車は間もなく発車した。
リヴァイはその姿が見えなくなるまでその馬車を見つめていた。


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