第27章 Restart
エマの性格からして黙って待つだけというのは許せなかったんだろう。
にしてもまた無謀な事を思いつきやがる…
壁外調査後の医務室は壮絶だ。
四肢がもげた人間やあまりの重症患者は外の病院へ運ばれるが、それでもここにも血まみれの人間や手足が変な方向へ曲がってしまった者、多種多様な症状の兵士が次々と運ばれてくる。
そんな場所に自ら行こうとするとは…
「エマ、お前のしてくれたことは調査兵団にとっちゃありがてぇことだが、無理はしてないか?」
エマはいつも自分たちのためにと頑張ってくれているが、知らず知らずのうちに負担になってはいないだろうかと心配になった。
だがすぐに返ってきた彼女の力強い言葉に、リヴァイの心配は杞憂となるのだった。
「全然、無理してるなんて思ってないです!少しでも力になりたい気持ち変わらないですし、学ぶことは自分にとってもプラスになるので…」
「そうか…そうだったな。」
エマの強い目を見て思い出した。
コイツはそういう奴だった。
人一倍誰かの役に立ちたい思いが強くて、目的のために真っ直ぐそして根気よく頑張れる奴だ。
「ありがとな。だが決して無理はするな。」
「はい!」
ニコリと笑うエマにつられて頬が緩んだ。
直向きに努力する姿勢。そしてその苦労は少しも表に出さない。
こういう時エマはいつだって明るく笑っている。
エマのそういうところが好きだし、素直に尊敬もしている。
笑っていたエマが、ふと思い出したように話し出した。
「そういえばリヴァイさん、」
「?」
「今日、リヴァイ兵長みたいな兵士になりたい!って言う少年に会いました。」
「ほう…」
正直そういう話はよく聞くから大して驚かないが、その少年とエマが何を話したのかは気になった。
「まだ10歳にも満たない子で妹を連れてたんですけど…強くなって巨人から妹を守りたいんだって。
最初は軽い気持ちで聞いてたんですけど、4年前に母親を巨人に食べられて、父親は奪還作戦に行ったきり帰ってこないって…
それを聞いた時、すごく心が痛みました……」