第27章 Restart
「“調査兵になって巨人を殺して家族を守るのが夢だ”と言っていました…最初はとても悲しい夢だと思ってしまったんです。
あの子を突き動かしているのは家族を失った悲しみと、巨人に対する憎しみなのかと思うと、悲しくてやるせなくて…
でもすぐに、そういうのじゃないって気が付いて。」
「………」
「あの子にとってはその夢こそが希望で、現実に抗う唯一の方法なんだって…」
真剣な顔で話していたが、そこまで言うとエマは複雑な顔をして笑った。
「結局私はこの世界で生きる人の気持ちを推し量ることなんて全然できてなかった。分かったような気でいただけだと…その子の目を見て気が付いたんです。」
「前にも言ったはずだろ?全て理解する必要はないと。」
「はい、それは分かってます…全てを理解することは無理だということも。
でも、その子と話して一つだけ私にもはっきりと自覚した事がありました。」
「…?」
「リヴァイさん」
笑みが消えると、今度はその大きな瞳で真剣にリヴァイを見据えた。
「私は…あの子や皆さんのように立派なことは言えないし出来ないかもしれないです。
でも、リヴァイさんのために精一杯生きるということだけは胸を張りたい。辛いことがあったら傍にいたいし、支えになる。リヴァイさんの人生に寄り添いたい。
それが私とって唯一の、最大の夢なんです。」
一点の曇りもない瞳。力強い言葉。
リヴァイは目を見開いた。
「い…いきなりすみません…」
我に返って急に気まずそうに恥じらうエマに、リヴァイはフッと笑って優しく抱き寄せた。
「そう言う台詞は女が言うもんじゃねぇだろ。」
「だって、思ったことは全部伝えたいから…」
「そんな大それたこと言っていいのか?もしお前の夢が途中で変わっても、俺は手放さねぇぞ?」
「変わらないから大丈夫です、一生。」
見上げる顔が柔らかく微笑んだ。
「エマ。お前が俺の人生に寄り添いたいと言ってくれるなら、俺はこの命が尽きるその時までお前を愛し守り続ける。いや死んだ後もずっとだ。」
「リヴァイさん…」
「共にここへ戻ってきてくれて嬉しかった…この先お前を離さすつもりなんてねぇからな。何があっても、絶対に。」
白い掌が頬に添う。
慈しむような視線が絡み合い、二人はそっと口づけを交わした。