第27章 Restart
二人はしばしの間その場から動かなかった。
昨夜もこうしたはずなのに、とても長い時間離れていたかのようにその体温も匂いも懐かしく感じる。
見つめ合い、吸い寄せられるように自然と唇を重ねた。
「待たせて悪かったな。」
「無事に帰ってきてくれてよかった…」
「またこうして抱きしめてやると言っただろ?」
「フフ…そうでしたね。」
嬉しそうにふわりと笑ってまた抱きついてくる。
エマの感触や温度を噛み締めるようにキツく抱けば、“ちょっと苦しいです”と言いながらも身を預けてくる。
この温もりが愛おしくて仕方がない。
「…負傷者の手当をしていたのか?」
「あ、はい!」
少し落ち着いて体を離すと、エマはやはり兵服のままだった。
ずばり言い当てられたことに驚いているようだ。
「さっき包帯抱えながら走ってるお前を見かけたんでな。怪我の処置できたのか?」
「本当に基本的なことだけですけど…」
「そうか…。あの場は人手は多いに越したことはないからな、お前の手があって現場も助かっただろう。」
自ら行動してくれたことに感謝の言葉を述べると、彼女はなにやらモジモジしながら遠慮がちに話し出した。
しかしその内容はリヴァイの想像の上を行くものだった。
「ただじっと待ってるのは嫌で…
空き時間に少しずつ、医務室の先生に教えてもらっていました。簡単な外傷の手当の方法や基礎的な薬の知識だけですけど…」
「ほう…」
正直驚いた。
忙しい仕事の合間に、いつの間にそんなことを教わっていたんだ。
「空き時間っつってもそんなにないだろ?いつから教わってたんだ?」
「1ヶ月くらい前からです。昼食後とか夕食後とか…あくまで先生の都合のつく時間だけでしたけど…」
「そんなに前からか。」
全然知らなかった。
彼女が影でそんなことをしているなんてまったく気づきもしなかった。
1ヶ月前と言えばちょうど付き合いたての頃だ。
昼食後なんて飯食って適当に休憩しているだけだと思っていたし、夜は仕事が遅くならない日は一緒に寝ていたし、それ以外の日は読書なりして自由な時間を過ごしているんだろうと思っていたのだが。
その隙間時間で、まさかそんな努力をしていたとは…