第27章 Restart
「自分を甘やかすか…そうだな、」
叶うことなら君に甘えてみたいよ
なんて気持ちが浮かんだが、そんな言葉はもう今のエマには言えるはずもない。
「そう言う面でも、私でお力になれることがあればなんなりと言ってくださいね。」
人を疑うことも卑しい想像もしない純粋無垢な笑顔が刺さった。
そんな風に言われてしまえば、こっちはいとも簡単に勘違いしてしまうではないか…
いや、都合良く解釈してしまう、の方があってるか。
それまで浮かべていた微笑みを消したエルヴィンが、真っ直ぐエマの黒い瞳を捉えた。
「…なら、」
君は私に何をしてくれる?
私が望めば、その温もりを貸してくれるとでも言うのか?
いや、そんな馬鹿なことはするはずがない。
私は何を愚かなことを考えているんだ。
「団長…?」
ほら、変に言いかけたからエマが困った顔をしてるじゃないか。しっかりしろ。
「あぁ、すまない。
君には…やはりこうして時々は私の話し相手になってくれないか。いや、別に無理に話はしなくてもいい…一緒にいてくれるだけでいい…早朝の5分でも、団長室に寄ったついでの3分でも。」
「それだけで…いいんですか?」
エマはポカンとしていた。
「ハハ…間抜けな顔になってるぞ。」
「いや…だって、」
「今言ったことは別に命令でもなんでもない。たまにそういう時間があれば、私は団長として頑張っていけるだろうな、という話だよ。」
何か言おうとしたエマを遮って続けると、彼女はどこか腑に落ちないような様子だったがとりあえず頷いた。
一瞬だけ期待した、君に甘えてもいいのか?と。
でもすぐに我に返って、そんな気持ちは打ち消した。
彼女の純粋な気持ちを踏みにじるようなことだけはしたくない。
ここで自分に歯止めをかけておかなければ。
リヴァイと結ばれたことを知った日、彼女への恋情にはきつく蓋をしたのだ。
もうエマにはこれ以上多くは望んではいけない。