第27章 Restart
「団長、今日はお疲れ様でした。」
「ありがとう。エマこそさっきここへ帰ってきたばかりだと言っていたが、こんな時間まで何をしていたんだ?」
「少しだけ、怪我をした人達の手当を…」
エマの言葉にエルヴィンは驚いたように眉を上げた。
「そうか負傷者を…それはとても助かる。
壁外調査後は常駐している医師の他に応援も来るが、人手は多いに越したことはないからね。」
「でも本当に簡単な手当だけなので…」
思ったことを素直に伝えるとエマは謙遜する。
誰かに言われてやったのだろうか?
いや、彼女の性格を考えると自分から進んで手伝ってくれたのだろう。
壁外調査後の怪我人の手当は簡単なものだろうと、思い立ってすぐにできるものではない。
きっとエマは前々から手伝いたいと思って行動していたに違いない。
本当に、この子の頑張り屋なところは尊敬する。
「エマ、ありがとう。」
エルヴィンが心を込めてお礼を言うと、謙遜していたエマはどこか安心したような顔で頷いた。
「私は兵士ではありませんが、調査兵団の一員として少しでもできることをしたかったので…正直、団長にそう言われて安心しました。」
「君の行いは前々から評価しているよ。いつも調査兵団のことを考えてくれてありがとう。
これからも無理のない範囲でいいが兵団のためにできることはして欲しいし、何かあれば声を掛けさせてもらうよ。」
エルヴィンがそう言うと、今度はパァッと嬉しそうな笑みを零して大きく頷いた。
「団長もきっと今日はお疲れだと思うので、ゆっくりできるか分からないですけど、なるべく身体休めてくださいね。」
「ありがとう。君に心配されてしまうようじゃ私もダメだな。」
「そんなことありません!難しいかもれませんけど…私は団長もにたまには少しくらい自分を甘やかして欲しいと思ってます。」
エマの言葉にエルヴィンは再び驚かされた。
こんなこと、兵団の人間からは誰からも言われたことはない。
きっとエマだからこそ言えてしまうんだろう。
この子はたまにこうして、私のことを団長としてではなく、一人の人として接してくれる。
それがすごく心地が良いし、嬉しい。