第27章 Restart
今すぐにでもエマに会いたい。
あいつの顔を見て声を聞いて、体温を感じたい。
きっとあいつも一人で不安だったに違いない。
そう思うといてもたってもいられなくなりそうだったが、今エマは医務室で奮闘しているだろう。
手当が終わってからでも遅くはないかと思い直した。
一旦は戻ってきた執務室をまた出て、汚れた体をさっさと綺麗にしてしまおうとリヴァイは自室へ向かった。
――――――――――――
怪我人の手当を手伝っていたら遅くなっちゃった…
リヴァイさん、怪我もなく無事らしいけれど、やっぱり顔を見るまでは安心できない。
リヴァイが出て行った数十分後、エマはもうすぐ駆け出しそうなほどの早歩きで執務室を目指していた。
コンコン―
返事がない。
ノブを回すと何も突っかかりなくドアは開いた。
「失礼します…」
カチャリと開けて覗くが、やはり主は不在だった。
それに昼間自分が居た時と部屋の様子は何も変わっていない。
まだ戻ってきていないのか…
どこに行ってるんだろう…団長の部屋?
待っていたらそのうち来るかな。
急いで戻って来たのにそこはもぬけの殻で、エマがさてどうしようかと思っている時、ノックする音がした。
「はい!」
背筋を伸ばして返事をするとすぐにドアが開いた。
「エマ、まだここにいたのか。」
入ってきたのはエルヴィンだった。
エルヴィンは少し驚いたような顔をして、中に歩を進めながら聞く。
「あ、はい。今ここへ戻ってきたばかりなんですけど…兵長に御用ですか?」
「あぁ、少しな。」
「まだここへは戻ってきてないみたいで…今から私も探そうかと思ってたんですけど、見つけたら団長室へ向かうよう伝えておきましょうか?」
「いや、急ぎではないからいいよ。ありがとう。」
壁外調査直後にリヴァイと話をしたいと言うのだから、取り急ぎの案件かとエマは思ったのだが、どうやらそうではなさそうだ。
そして意外にもエルヴィンの表情は柔らかい。
今朝、仲間を鼓舞しながら兵団を率いて壁の外へ駆け抜けていった面影はもう見当たらなかった。