第27章 Restart
今回の犠牲者は4人。
前回の調査に引き続き稀に見る少なさだが、少なければそれで良しではない。
仲間の命を失いたくない気持ちは皆同じだ。
そして自分が死にたくないのも皆同じ。
死ぬのは辛い。死んでいった本人も、周りの人間も。
例え人類を救うという大いなる目的のために死んでいったとしても、辛いことに変わりはない。
調査兵団に入ってから別れの連続。悲しく苦しい日々だ。
でも決してそれは当たり前にならないし、当たり前にもしたくない。
最も優先とすることは見失いようにしつつ、生存率ももっと高められるよう尽力しなければいけない。
「あ!あれエマじゃない?」
じっと考えていたリヴァイだが、ハンジの声に顔を上げると、視線の先に左から右へと駆けていく少女が映った。
手には何やら大量の白いものを抱えている。
「何やってんだ…」
こちらには目もくれず慌てた様子で建物の中へと入っていく。
あの先には医務室がある。
「もしかして負傷兵の手当してるのかな?エマ、医療の知識なんてあったっけ?」
「俺の知る限りないな。」
「だよねぇ…」
手に抱えていたのは包帯か?
エマが怪我人の手当をしているところなんて見たことがないが、あれはハンジの言うとおり負傷兵の面倒を見に行ったと考えるのが妥当だ。
エマの動向が気になったが、たぶん今医務室に行ってもバタバタしていて邪魔になるだけだろう。後で聞いてみるか。
リヴァイ達はそのまま、医務室とは反対にある幹部棟へと入っていった。
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執務室へと戻ってきたリヴァイ。
当然のことながらエマはここには居ない。
静かな部屋で一人になると、昼間空を飛び回り刃を振るっていた光景が鮮明に、しかしどこか客観的に蘇ってくる。
壁外調査の後はいつもこうだ。
数時間前、確かに巨人をこの手で殺めていたというのに、その感触だって残っているというのに記憶だけがふわふわしていて、あれは本当に自分がしたことなのかとさえ思えてくる。
要は実感が湧かないのだ。
ここに生きて戻って来れたという実感が。
不意に昼間目にした一人の仲間の断末魔が脳裏を過ぎり、ゆっくりと目を閉じた。同時に、ふぅ、と掠れたため息が口から漏れる。