第27章 Restart
「ネェチャン、何でここにいるの?」
突然どこからともなく聞こえた声に、エマはバッと顔を上げる。
「わぁっ!びっくりした…」
いつの間に入ってきたのだろうか、横に立つ幼い少年と少女。
「今日はヘキガイチョウサだろ?壁の外へ行かないの?」
ガラス玉のように透き通った目をした少年は、一回りくらい小さい女の子の手を握りながら、不思議そうに首を傾げている。
「お姉さんはね、ここでお留守番なんだ。」
自由の双翼を着ているのに壁外に行っていない。
細かい事情など何も分からない子供からしたら、素直に湧く疑問だろう。
少年はなおも続ける。
「ふーん。ネェチャンは巨人と戦ったことある?」
「巨人とは…戦ったこと無いの。」
「え?!調査兵団なのに巨人と戦ったことないの?!じゃあ壁の外は行ったことある?」
「壁の外へも行ったことないんだ…私は調査兵団だけど、他の兵士さんみたいには戦えないの。」
「え?!」
驚いて目を丸くする少年に、エマは眉を下げて微笑む。
「調査兵なのに壁の外に行かないなんて変だよね。
でも私は、自分にしか出来ない方法で兵士の皆を支えて行きたいと思ってるの。壁外調査中はちょっと歯がゆい気持ちになっちゃうけど…
でも皆の無事を祈ってここで待つことも、大事な自分の使命だと思ってるんだ。」
最初の頃のように秘書しかできない自分が悔しいとか、自信を持てないという気持ちには今はもうならなかった。
自分の役目を、人に堂々と言えるくらいにはなった。
「へぇー…よくわかんねぇけど、なんかネェチャンもかっこいいな。」
「そうかな?ありがとう。」
「やっぱり調査兵団の人は皆かっこいいよ!
俺さ!調査兵団に入ってリヴァイ兵長みたいな強い兵士になりたいんだ!強くなって巨人をいっぱい殺して、妹や街の皆を守ってやりたい!」
妹の手を握りしめて声を張る少年の瞳には強い意志が宿っていた。
たぶんまだ10歳に満たないくらいの子供だ。
そんな子が自ら兵士になって戦いたいと言う。エマは驚いた。
「君はすごく勇敢だね。」
「うん!めちゃくちゃ強くなって、リヴァイ兵長と一緒に戦う!それが俺の夢だ!」