第27章 Restart
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エマ達が調査兵団へ戻ってきてから、また忙しく毎日が動き出した。
リヴァイは一週間後に迫った壁外調査の調整やら作戦会議やらで執務室に居る時間は少なく、エマは彼のペーパーワークをひとつでも多くカバー出来るように机に向かう日々だった。
やはり二人きりの時間はなかなか持てなかったが、それでも少しの合間を縫っては会話したり、スキンシップは怠らなかった。
時間が無い中でも自分のことを気にかけてくれるリヴァイの気持ちが嬉しかった。それにエマだってまったく同じ思いだ。
あの5日間を過ごしてからというもの、どんな時でもこれまで以上に二人の時間を大切にしようと、お互い言葉は交わさなくともそう思っていたのだ。
「エマ、一人で大丈夫か?」
「はい。信じて待ってますから…兵長は作戦に集中してくださって大丈夫です。」
「明日の夜、必ずまたこうしてお前を抱きしめてやる。すまねぇが待っててくれ。」
「兵長…」
「約束する。あと…二人きりの時はそう呼ばなくていいと言っただろ。」
「そうでしたね。リヴァイさん、どうかお気をつけて。」
壁外調査の前日。
二人は身体を重ねた後、ベットの上で互いの体温と肌の感触を何度も何度も確かめるように抱きしめ合った。
そうして迎えた壁外調査当日。
天候にも恵まれ、調査兵団一行は再び分厚い石の門をくぐった。
手網を握る兵士達の無事を祈りながら見送ったエマは一人兵舎へと戻る。
やはり不安は尽きないが自分にできることは信じることのみ。
リヴァイから託された仕事を黙々とこなし、一通り終えると世話をしている花壇へと向かった。
「あ!芽が出てる!」
可愛らしい若草色の双葉がたくさん土の中から顔を出している。
指先でちょんちょんとつつくと瑞々しく張りがあり、とても小さいが生命の力強さを感じた。
殺風景な花壇に、芽吹いたばかりの優しい緑が彩った。
「元気に育ってね。」
かすみ草の芽を見て、エマは夕焼け色に染まる空を仰ぐ。そしてまた芽を見つめた。
順調に育てば、このかすみ草が花開くのは6月の末。
この子たちが咲き誇るのを、リヴァイさんと一緒に見られますように…
無意識にそう願った。