第27章 Restart
「大丈夫ですかハンジさん!」
「ヘーキヘーキ!
それよりありがと…朝から良いもの見せてもらったよ。」
「…っ!」
まったくダメージを食らっていないどころか愉しそうに耳元で囁くハンジに、エマは心配するどころか耳まで真っ赤になってしまった。
リヴァイさんとの濃厚なキスをハンジさんに見られてしまった…
冷静になると顔から火が出そうになるほど恥ずかしくてエマは顔を隠した。
「おいクソメガネ。朝っぱらから何の用だ?」
「あ!そうそう。リヴァイにお届けものだよーん。」
すこぶる不機嫌な男に差し出された一通の手紙。
受け取った瞬間、その顔が僅かに強ばったのをエマは指の隙間から垣間見ていた。
「間違って私の所にきてたんだよねー。あ、中身見たりなんてしてないから安心してね!じゃっ!」
ハンジはそう言うと、颯爽と部屋を去って行った。
相変わらず賑やかな人だな…とその背中を見送った後、エマはリヴァイの方を見た。
「見ないんですか?お手紙。」
もらったばかりの白い封筒。
リヴァイは中身も改めず、そのまま机の引き出しにしまい込んでしまった。
「後で見る。」
「え?いいんですか?大事なお手紙とかだったら…」
「内容はもう分かってる。5日前にハンジからもらったものと同じだ。」
「そうなんですか…」
閉じた引き出しを見つめたまま呟くリヴァイの顔はよく見えなかったが、声はどことなくトーンが低く聞こえた。
何だろう…この妙な胸騒ぎ。
いつも届く手紙は大抵兵団関係のもので、私には関係ない内容なはずなのに。
リヴァイさんの言動が、声色がどこか引っかかってしまう。
「何不安そうな顔してやがる。」
「いえ、そんな顔は…」
「…お前には関係のない話だ。いちいち気にしなくていい。」
「あ、はい…」
“お前には関係ない”と言われたらどちらかと言えば安心する気がするのに、今の私は何故か余計に不安を煽られてしまった。
根拠のない漠然とした不安だ。
だから、リヴァイさんに変な気を遣われてしまっては良くない。
私はなるべく自分の心情を悟られないように、普通に振る舞った。