第27章 Restart
私は目を瞑り、ふぅーと大きく息を吐いた。
よかったな、リヴァイ。
そう思う気持ちの裏で、フツフツと湧き上がる黒い感情を外に吐き出すためだ。
「………」
エマがリヴァイの名を呼ぶ声を、何度も頭の中で再生してしまう。
あっちの世界で二人はどんな5日間を過ごしたのだろうか。
リヴァイは調査兵団の兵士長という立場を手放し、エマと二人きりで過ごした時間はとても充実していたに違いない。
きっとエマとじっくり愛を深め合えたのだろう。
考えると胸がズクズクと痛む。
心の中が不快なもので満たされる前に、もう一度息を吐いてどうにか自身の均衡を保った。
想い合っている二人の間に自分が割り入ることなど、最初からできないと分かっていながら、着実に絆を深めていく二人を見て自分は傷ついている。
なんと女々しくて未練がましいのだろう。
いつもならしっかりしろと脳から指令を出せば大抵平常心になれるというのに、何故か今回はうまく行かなかった。
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リヴァイは自身の執務室に着くと、ソファにエマを座らせた。
「リヴァイさん…なんか、怒ってます?」
「別に怒ってねぇよ。」
隣にドサッと座り込んで、華奢な肩を抱き寄せた。
するとすぐに肩の上にぽす…と重みが乗っかる。
サラサラと絹のような髪を梳かすと、こちらを見上げながらエマが口を開いた。
「もしかして、ヤキモチ…ですか?」
そういう口端は少し上がっていて、面白がられているようで勘に障る。
「…なんでそんなに嬉しそうに聞いてきやがる…」
「フフ…もしヤキモチなら、ちょっと嬉しいなぁなんて思って。」
「は?」
何を訳の分からん事を…
「だって、それだけ好きだって言ってくれてるのと同じな気がして。
嬉しいです。リヴァイさんは良い気分じゃないかもしれないけど。」
眉間に皺を寄せる俺を見上げる屈託のない笑顔。
それを見たらイライラしていた気持ちなどすぐに飛んでいってしまう。
実際エマの言う通りだ。
俺はたったあれだけのことで嫉妬していた。
大人気ないと分かっていても他の男に嬉しそうにするエマは見たくない。
それが彼女のことを思慕していたエルヴィンが相手だと尚更だった。