第27章 Restart
「エマの世界はここよりとても平和だったのだろう?…それなのに、彼女は決断したのか。」
この厳しく残酷な世界で、リヴァイと共に生きると…
「あぁ。だから俺もコイツを全力で幸せにすると決めた。こんな世界でも、必ずな。」
「…そうか。ならば彼女のためにも、一刻も早くマリアを奪還して巨人の生体を解明し、平穏を取り戻さなければな。
しかしお前が“あっちで生きていく”と言わなくてよかったよ。」
冗談めかしたが真顔で返事が飛んでくる。
「少なくともお前が野望を果たすまでは消えねぇよ。だからこれからも、俺の力は最大限利用してくれりゃいい。」
「それを聞いて安心した。お前は調査兵団に無くてはならない存在だからな…これからも頼むぞ。」
「あぁ。」
エマを見たときにした複雑な顔は一瞬で、その後はいつも通りのリヴァイだった。
少し気にはなったが、とりあえず今はここまで分かれば充分か。
柔らかな日の光が窓から薄らと差し始めたことで、もう活動し始めなけれぱならない時間だと気づく。
さっきまでの嵐が嘘のような、穏やかな朝だ。
「後は俺の部屋で様子を見る。邪魔をしてすまなかったな。」
「なに、どうせ雷で目は覚めていたんだ、気にするな。」
「…ん」
リヴァイがエマを抱えて立ち上がったところで、小さな声がする。
「…起きたか?」
「あ……リヴァイさん…」
「エマ、起きたのか。良かった。」
「っ!団長!……ということは私たち、無事に…」
私の顔を見て目を見開き、そのままリヴァイを見上げるエマ。
「帰って来た。時間もお前の世界に飛んだ日の朝に戻ってる。そして今回はエルヴィンの部屋に繋がったらしい。」
「っえ!」
それを聞くなり慌ててリヴァイから降りて頭を下げ出すエマ。
「団長、すみませんでした!」
「いやいい。君が眠っている間に一通り話も聞けたしな。
こう言っていいものなのか少し躊躇ってしまうが…私としては君が戻ってきてくれて嬉しいよ。おかえり、エマ。」
「ただいまです…エルヴィン団長。」
頭をポンポンと撫でるとはにかんだ笑顔を見せて返事をした。
たったそれだけのことだが心はほわりと温まり、胸の奥にしまい込んだはずの彼女への気持ちが僅かに滲む。