第27章 Restart
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「…なるほどな、話は大体分かった。」
気が付けば嵐は止み、空は明るくなってきている。
自室の椅子に腰掛けながら、エマの世界に行って帰ってくるまでの話をリヴァイから聞いていた。
4月1日の夕方、つまり今から約12時間後。
エマが世話している花壇付近の枯れ葉の山に足を踏み入れたところ、地面の下へ吸い込まれるように落ち、目を覚ましたら彼女の部屋だった。
3ヶ月ぶりに帰ったが時は進んでいたどころか、エマが最初に井戸に落ちた日から一日も進んでいなかった。
それから数日かけてエマが落ちた古井戸を見つけ出し、そこで出会った老婆に井戸にまつわる言い伝えを聞いて、やはりその井戸がこちらに繋がっていると確信して、飛び込んだ…
話のあらすじはこんなところだった。
「まぁ何にせよ、向こうに行ってる間もこっちの時間はほぼ足踏み状態だったから安心したがな。」
「お前たちが飛んだのは4月1日の夕方、ということは約半日巻き戻っているのか……そうだな。仮に同じだけ時間が進んでいれば、危うくお前無しで壁外へ出ねばならないところだった。」
「そうはならねぇように一応期限は設けていた。
だがエマが故郷に戻った時も時間は進んでなかったからな。時間に関してはそういう法則があるのかもしれん。」
「どちらにせよ、こちらにとっては都合のいい話だったな。壁外調査までに戻ってきてくれてよかったよ。」
「…まぁな」
曖昧な相槌を打つリヴァイに目を向けると、どこか複雑な表情でエマの顔を見つめていた。
彼女は相変わらず、ソファの上で規則正しく寝息を立てている。
「リヴァイ。エマが一緒に戻ってきたことについてだが…」
彼女は一度は故郷に戻れたというのに、再びここへ来た。
その理由に全く心当たりがない訳ではなかったが、こうなった経緯ははっきりと聞いておきたかった。
今はもうリヴァイのものになってしまったが、そうすんなりと彼女への慕情を消せた訳でもない。
エマがここに留まってくれるなら、それは自分にとっても喜ばしいことだ。
「エマが選んだ。ここへ戻りたいと。
一瞬帰してやるべきとも思ったが、やっぱりコイツが決めた事ならそれを尊重してやりたかった。」