第27章 Restart
10月15日、朝
「止みそうにないですね…」
窓の外を眺める背中を、ふわふわの羽毛布団の中から見ていた。
「エマ」
名前を呼べば、後ろを振り返ったエマは大変面白くなさそうな顔をしている。
だが目で“こっちへ来い”と言えばすぐにふにゃりと頬を緩めて素直に近づいてきた。
「どうしたんですか?」
呼ばれた理由なんて分かっているだろうに、ニコニコしながらわざとらしく聞いてくるのが憎らしくもあって、可愛くもある。
俺はエマの腕を掴んで布団の中へ引きずり込んだ。
「わぁっ!」
「あったけぇな…」
腕の中にすっぽりと収めれば背中に腕が回って、彼女の温度が全身に広がる。
髪にキスを落として息を吸い込めば、甘い匂いが鼻腔を駆け抜けて心が解れた。
「海…行けそうにないですね…」
胸に顔を埋めたままのエマが残念そうに呟く。
「俺は別にいいぞ。お前とこうしていられるだけで十分だしな。」
「兵長…」
「名前で呼べと言っただろ?」
「…リヴァイさん」
もぞ…と顔を上げて微笑む唇にキスをする。
余韻を残すようにリップ音を立てて離すと、彼女の目はもうトロンとなりかけている。
「フッ、昨日散々シといてまだ足りねぇのか?」
「ん…リヴァイさん…好き。」
背中に回った腕にキュッと力が入った。
昨日風呂でヤった時から、やけに素直になったな。
そんなことをされるとまた自身の中で熱が燻りしそうだったが、昨日は部屋でも夜中までヤリまくって、さすがに今はセックスまでするのは無理そうだ。
「あれだけ善がり狂っといて…底なしだな。」
「…リヴァイさんのせいでおかしくなっちゃったのかも。」
「そりゃおおいに結構なことだ。おかしくなっちまえばいい。」
俺も、お前のせいでもうだいぶおかしくなってるしな。
「でも、海行きたかった。」
「こんな土砂降りじゃあな…行くだけでずぶ濡れになっちまう。」
昨日までの快晴はどこへやら、外は大雨でおまけに雷まで鳴っている。
エマは“どうしてもリヴァイさんに見せたかったの…”と心底残念そうだ。
正直俺も“海”というものを間近で見てみたかったが、この天気じゃさすがに諦める他ない。
「いつか、また見に行けますかね。」
「あぁ行こう。必ず。」