第26章 兵長ご満足プラン ※
「お口にあって良かった!あとこれと、こっちも美味しかったですよ!」
「もうそんなに手をつけたのかよ…食い意地張りすぎだろ」
「だって!全部美味しそうなんですもん!」
リヴァイは呆れ気味だったが、スプーンで薄黄色のプルプルしたものを頬張りうっとりとするエマを見ると綻んだ。
その後もエマに促されたものを食べてみれば口にするもの全てが美味であり、リヴァイの悶々としていた気持ちは知らぬ間に影を潜め、純粋に食事を楽しんでいた。
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部屋食の夕飯はどれも本当に美味しいものばかりで兵長も満足してくれたようだし、奮発してこの宿にしてよかったと思った。
“兵長ご満足プラン”は概ね良好だ。
後は温泉に浸かってゆっくりと癒されてもらおう…
ゆっくりと…
あぁどうしよう!ついにこの時間がやってきてしまった!
「おいエマ」
「はい!?」
「風呂はどこだ。」
急にリヴァイが振り返り、エマは無駄に大声で返事をしてしまった。
「あ、えと…」
いけないいけない!
またこの先のことで頭がいっぱいになってた。
「“檜”だから こっちです!」
目の前に“欅”と書かれた暖簾。確かここを左に曲がって渡り廊下をいった離れにあるとフロントの人が言っていた。
エマが先導してリヴァイがその少し斜め後ろを歩く。
エマはリヴァイに気づかれないようバスタオルを抱きしめながら数秒目を瞑った。
なるべくお風呂のことは考えないようにしよう、平常心、平常心…
何とか落ち着かせていたが、“檜”の文字が見えた瞬間またあっという間にバクバクと心臓が鳴る。
「ここか」
「そうですね…」
先に暖簾をくぐったリヴァイの後について、ついに足を踏み入れた。
中に入ると履き物を脱いですぐに脱衣所だった。貸切風呂なので中はこじんまりとしている。
薄暗い部屋の四隅には和紙でできた間接照明が置かれ、柔らかな灯りが和の情緒溢れる空間を生み出していた。
なんかこの薄暗さ、逆に落ち着かない…
まだ脱衣所だというのに変な雰囲気に呑まれてしまい、結局必死に平常心を言い聞かせてきた努力も無に帰した。