第26章 兵長ご満足プラン ※
「ここ貸切風呂やってるんです!そこなら一緒に入れます!」
一方のエマはもう必死だ。
せっかくの旅行がリヴァイにとって嫌な思い出になってしまうなんて絶対嫌だし、何より一刻も早く機嫌を直して欲しい。
そう思って必死に頭を回した結果浮かんだのが、“貸切風呂”という妙案。エマは藁にもすがる思いだった。
「貸切風呂…?」
「そう!そこなら二人で入れます確実に!予約が空いてればなんですけど…」
「そんな風呂があるなら早く言えよ。最初からそこでいいじゃねぇか。」
相変わらず眉間に皺は寄ったたままだが、さっきより幾分トーンが落ち着いている。
間一髪だ。エマは心の中で安堵のため息を吐いた。
「それもそうでしたね…じゃあ空いてる時間あるか聞きに行きましょうか。」
「あぁ」
道を引き返しフロントに向かう。
これで少しは機嫌直してくれるといいけど…
大浴場はお預けになってしまったけれど、リヴァイの機嫌が戻るのならそれにこしたことはない。
「では7時半より45分間、貸切風呂“檜”を予約させていただきますね。」
「よろしくお願いします。」
エマは愛想の良いフロントの男性とはあまり目を合わさないようにして、そそくさとロビーで待つリヴァイの元へと戻った。
さっきは兵長の機嫌直すのに必死でそれどころじゃなかったけど。
兵長と二人きりでお風呂…なんだよね…二人、きりで…
どうしよう…想像しただけで恥ずかしすぎて死にそう…
「空いてました、7時半から入れます!」
「そうか、ならよかった。」
眉間の皺が漸く伸びてホッとする。がしかし、
「お前…顔赤いぞ?」
「そ、そうですか?!」
鋭く指摘されてエマはピクリと体を揺らした。
あぁ、気付かれちゃう…治まって!
しかし意識すればするほど頬は熱を持ち、もはや隠すのは不可能なほど紅潮してしまった。
「どうした、体調でも悪いの」
「全然大丈夫です!!」
心配そうに額に手を当てようとしたリヴァイから素早く身を引く。
お願いだから悟られませんように…!
だがその直後。
「おいエマ。」
自分を呼ぶどこか愉しげな声に、エマの中に嫌な予感が駆け巡るのだった。