第26章 兵長ご満足プラン ※
男女別でしかも不特定多数の他人と共有で入るのが“温泉”。
しかしそんな概念はリヴァイの中に微塵も存在していなかったのだ。
広く開放的な湯船でそれはもう心ゆくまで、エマと愉しいスキンシップを図ってやろう。そう思っていたのに…
戸をくぐって飛び込んできたのは、先を行く男女が“じゃあまた後でね〜”と言ってしっかりと別々の暖簾をくぐる光景。
しかも一組だけじゃなく皆一様にそうしている。落胆した。
重要なことだからもう一度言う。
本当に落胆した。
何が楽しくてムサイ男共と入らなきゃならねぇんだ…
「お前と入れないなら来た意味がない。部屋へ戻るぞ。」
「えぇ?!ちょっと待ってください!」
「あ?」
踵を返して出ようとするリヴァイの腕に掴みかかると、その鋭い眼光に怯みそうなってしまう。
しかしエマだってここで大人しく引き下がる訳にはいかない。
「いくら何でもそれは勿体ないです!私と一緒じゃなくても入ればきっと満足してもらえるはずですから!」
「いいやお前がいなきゃ入る意味がねぇ。」
「う…そこを何とか考え直してくれませんか?!」
「いや戻る!」
暖簾の前で押し問答を繰り返す二人を、老夫婦が珍妙な面持ちで見ながら通り過ぎていく。
いい歳した大人がこんなことで機嫌を損ねるなどクソほど子供じみてる。しかもこっちが勝手に期待してただけだというのに。
本当はこんなところで駄々を捏ねてエマを困らせてはいけないことは分かっている、分かってるいるのだ。けれど…
リヴァイはこの旅行で“オンセン”に入れることを一番楽しみにしていたのだ。それはもう何よりも一番に。
だからその分ショックも半端ない。もう温泉などどうでもいいとさえ思ってしまうほどだ。
…決めた。
今すぐ部屋へ戻ってコイツを抱く。
じゃなきゃこの持て余した欲を収めることなど到底できやしない。
腕を掴んだままのエマの腕を逆の手で掴みそのまま引っ張って行こうとした時、彼女が急に大声を上げた。
「あっ!!」
「チッ、うるせぇな何だよ」
まだ何か言うのかと振り返ると、何かを閃いたようなエマの顔が。
「兵長!ありました!一緒に入る方法!」
「…なに?」
その言葉にリヴァイの足はピクリと止まった。