第4章 混乱
上気した顔を抑えながらぼーっとリヴァイのことを目で追っていると、ほどなくしてリヴァイは口を開いた。
「やめておけ。」
「え…?」
「お前が俺とどうにかなったところで、お前は幸せにはなれないだろ。」
リヴァイはまっすぐエマを見つめてそう言った後、目線を外した。
さっきの行動からはまったく繋がらないようなことを言われ、一瞬何を言っているのか分からなかったが、その言葉の意味はすぐに理解することが出来た。
そうだ。
リヴァイ兵長の言うことは最もだ。
だってそもそも私達は生きてきた世界がまったく違うじゃないか。
それにいつかは元の世界に帰ることになるだろう。
そうなればこの世界で人を愛することが出来たとしても、後々辛いだけだ。
それに兵長は立派な兵士なんだ、そんな人相手に何を呑気なこと言って…
さっきまでの高ぶる気持ちはどこへ行ったのか、エマの頭はすぅーっと冷静になっていく。
「そ、そうですよね!きっとちょっと浮かれてるだけなんです!私って異性とどうのこうのとかそういうの全然したことなくて!リヴァイ兵長の善意を勘違いしてこんな発言してしまって…あはは、兵長も困りますよね本当!すみません!!」
あれ?
「あっ!そろそろ朝食の時間ですかね!戯言に付き合わせてしまってすみません!兵長もご飯モリモリ食べて力つけてくださいね!」
エマは畳み掛けるように喋ったかと思うと、思い立ったように立ち上がった。
そしてリヴァイに精一杯の笑顔を向けると、逃げるようにして執務室を後にしてしまうのだった。