第4章 混乱
「い!いえ!何もついてません。」
「そうか。」
「はい…」
「………」
どうしよう。
何を話せばいいのか分からない。
「あっあの」
「俺が嫌か?」
何か言おうと口を開くとそこに被せるように質問が降ってきた。
「い、嫌なわけないじゃないですか!」
「なら何で俺を避けてる。」
「避けてる…つもりはありません。」
「いや避けてるだろ。」
“理由はなんだ?”と直球で質問を投げつけてくるリヴァイの目は、誤魔化しなんて許さないと言っているようだった。
「……あの日、リヴァイ兵長が善意で助けてくれたのは分かってるんです。でもなんかその、兵長が暖めてくれたこととか私を連れて飛んで帰ってくれたこととか本当に嬉しくて思い出す度心臓がうるさくて、だからその、期待してしまいそうになっちゃう、っていうか…そのつまり、私おかしいんです!」
…えと、何言ってるんだ、私。
これじゃまるで告白してるみたいじゃないか!!
焦ったエマは、口を開くと次々と勝手に言葉が出てしまった。
どうしよう。怖くてリヴァイ兵長の顔見れない。
「ほぅ。それはつまり…」
リヴァイは突然席を立ちエマに近づきながら話し始める。
エマはやらかしてしまった感満載でまったく顔が上げられず、俯いたままだ。
「そのうち俺とこういう展開になるのを期待してる、ってわけか?」
「一ッ!!」
その瞬間、俯く顎を指先でクイッと持ち上げられたかと思えば、数センチ先に迫ったリヴァイと視線が交わった。
瞬きも呼吸も忘れそうになる。
鋭くもその隙間から色気を感じる三白眼に見つめられ、金縛りにでもあったかのようにその場から動けなくなった。
心臓の音だけがやけにうるさく聞こえている。
「まんざらでもないような顔してるな。」
「あ…」
そのまま耳に唇を寄せゆっくりと囁かれれば、エマは消え入りそうな声を絞り出すことしかできなかった。
そのまま数秒の沈黙の後、リヴァイは顎を掴んでいた手を下ろし、向かいの席に座り直した。
表情はいつもの冷静さを纏っている。
対してエマの顔は、湯気が出るのではないかと思うほど真っ赤に染めあがってしまっていた。